発達障害グレーゾーンの人が職場でつらい理由

はじめに|「診断がつかない」という見えにくさ
職場で「生きづらさ」を抱えている人の中には、発達障害の特性を思わせる困りごとがあるにもかかわらず、診断基準を満たさない、いわゆる「グレーゾーン」に位置づけられる人が少なくありません。
精神科産業医として現場を見ていると、このグレーゾーンの人たちが、最も孤立しやすく、最も評価されにくい構造の中に置かれていることを強く感じます。本記事では、現役精神科医・産業医の立場から、休職を繰り返す社員への対応について、人事・管理職・経営者向けに実務的に解説します。
発達障害グレーゾーンとは何が「グレー」なのか

困りごとはあるが、診断名がつかない
発達障害グレーゾーンの人は
・集中力にムラがある
・指示の受け取り方に偏りがある
・マルチタスクで混乱しやすい
・対人関係で疲弊しやすい
といった困りごとを抱えていても、
医療的には「発達障害とまでは言えない」と判断されることがあります。
結果として、
・支援の対象にならない
・配慮の根拠が示しにくい
といった状態に置かれがちです。そのため、適切な配慮がなされないため、ストレスを抱え、そのストレスがうつ病や適応障害といった疾患につながる可能性も高いと普段の産業医業務や病院での外来業務の経験を通じても感じます。
本人も「説明できない苦しさ」を抱えやすい
診断がつかないため、
・なぜ自分だけうまくいかないのか
・努力が足りないのではないか
と、問題をすべて自分の責任として抱え込んでしまう人も多くいます。
職場で一番つらいのは「どちらにも属せない」こと
配慮も支援も受けにくい立場に置かれる
発達障害と診断されていれば、
・業務調整
・環境調整
・周囲への説明
が行われることもあります。
一方、グレーゾーンの場合、
・「診断がないから配慮できない」
・「普通にできるはず」
と扱われるやすく、
困っているのに助けを求めにくい状況に陥ります。
「できない理由」が理解されにくい
グレーゾーンの人の困りごとは、
・日によってできたりできなかったりする
・一部の業務は得意だが、別の業務が極端に苦手
といった形で現れます。
そのため周囲からは、
・やる気の問題
・注意不足
・成長の途中
と誤解されやすく、評価が不安定になりやすいのが実情です。
評価と期待のズレが、心を追い詰める
「できている部分」だけを見て期待される
一部の業務ができてしまうために、
・もっとできるはず
・なぜ毎回できないのか
と期待が上がり、本人のキャパシティを超えた要求が続くことがあります。
この状態が続くと、
・慢性的な疲労
・自信の低下
・抑うつや不安症状
に繋がりやすくなります。
失敗すると一気に評価が下がる
グレーゾーンの人は、
・小さなミスが積み重なる
・説明がうまくできない
といった理由で、一度つまづくと評価が急落しやすい傾向があります。これは本人にとって、非常に消耗の大きい体験です。
精神科産業医が考える「本当につらい理由」

努力が評価につながりにくい構造にある
精神科産業医の立場で見ると、グレーゾーンの人が一番つらいのは、
努力しても評価されにくい構造の中に置かれていること
です。
・本人は必死に工夫し仕事をしている
・しかし結果だけを見て判断される
このギャップが、自己否定感を強めていきます。
「怠けているわけではない」と証明し続けなければならない
診断がないため、
・言い訳に見られないように
・甘えだと思われないように
常に自分を正当化し続けなければならない状態が、精神的な負担を大きくします。
職場に必要なのは「診断」よりも「困りごとの整理」
診断名ではなく、業務への影響を見る
重要なのは、
・何が苦手で
・何が負担になっていて
・どこでつまずきやすいのか
を具体的に整理することです。
診断名がなくても、業務調整や環境調整は十分に可能です。それぞれのケースに応じた適切な配慮を行うことは離職率を低下させるために必要であると日々の業務を通しても実感しています。
本人・上司・企業が孤立しない仕組みづくり
グレーゾーンの問題は、
・本人だけの問題
・上司だけの問題
ではありません。
第三者(産業医などの専門家)が入ることで、感情論ではなく、構造として整理することが可能になります。メンタル産業医センターでは速やかな産業医を行なっておりますので、お気軽にご相談ください。
まとめ|グレーゾーンの苦しさは「見えにくさ」から生まれる

発達障害グレーゾーンの人が職場で一番つらいのは、困っていること自体が、周囲から見えにくいことです。
・支援も配慮も受けにくい
・それでも成果は求められる
この矛盾が心をすり減らします。
診断の有無に関わらず、困りごとに目を向ける視点が職場全体のメンタルヘルスを守ることにつながると考えます。日々の産業医業務を行なっていても、グレーゾーンの方への配慮がされないケースも多々あります。発達障害グレーゾーンの方への理解がより深まると良いと感じます。診断名にとらわれず、「何に困っているか」に目を向けることが、本人と職場の双方を守る第一歩になると考えます。
この記事の執筆者
Dr.Y(精神科医・産業医)
国立大学医学部を卒業後、都内の基幹病院で初期研修を修了。
その後、首都圏の急性期精神科病院に勤務し、
統合失調症、双極性障害、うつ病、依存症、認知症など
幅広い精神疾患の診療に従事。
現在は複数企業の選任産業医として、
復職支援、メンタルヘルス不調者対応、労務トラブル予防、
組織改善支援を行っている。
※本記事は精神科医・産業医としての専門的知見に基づき執筆しています。 個人が特定されないよう配慮し、プライバシー保護を最優先としています。
企業のメンタルヘルス対応で、判断に迷ったら
本記事は一般的な考え方をまとめたものです。 休職・復職対応、産業医面談、職場配慮の判断は、 企業の状況や従業員の状態によって異なります。
社内だけで判断が難しい場合は、 精神科専門の産業医に相談することで、 リスクを抑えた対応が可能になるケースもあります。
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