メンタル不調を悪化させる瞬間

精神科産業医の視点から、会社の対応によってメンタル不調が悪化してしまう瞬間を解説したアイキャッチ画像
精神科産業医が現場で実際に目にしてきた、企業対応によってメンタル不調が悪化する典型的な場面を解説します。

はじめに|「悪意はない」のに、なぜ悪化するのか

メンタル不調を抱える従業員に対し、多くの企業は「配慮しているつもり」です。
しかし精神科産業医として現場を見ていると、善意の対応が、かえって症状を悪化させている場面を少なからず目にします。
本記事では、精神科医・産業医の視点から、今までの経験もふまえて「会社が無意識のうちにメンタル不調を悪化させてしまう瞬間」を整理します。また、現役精神科医・産業医の立場から、当該社員への対応について、人事・管理職・経営者向けに実務的に解説します。

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精神科産業医が現場でよく目にする「悪化の瞬間」3選

重要なポイントをわかりやすく示す女性スタッフのイメージ画像
ここから押さえておきたい重要なポイントを整理します

①休職を迷っている時に「もう少し頑張れるよね」と言われた瞬間

不調の初期段階で、
・「まだ軽そうだから」
・「今が繁忙期だから」といった理由で無理をさせてしまうと、結果的に長期休職や重症化リスクにつながるケースがあります。精神科的には、「休むべきタイミングを逃すこと」自体がリスクと考えます。不調が出た初期段階で休むことは長期的にみると良い選択だと思います。

②体調が悪い理由を「性格や気持ちの問題」として扱われた瞬間

・「真面目すぎるんだよ」
・「気にしすぎじゃない?」
こうした言葉は、本人にとって「理解されていない」という感覚を強めます。
症状が自分のせいだと感じてしまうことが回復を遅らせる要因になります。うつ病の症状に自責の念を感じるといった項目がありますが、病状的にうつ状態では自分のことを責めてしまいがちなところに、他者から悪いと言われるとさらに責めてしまい、病状悪化に繋がります。

③復職初日に“普通に働ける前提“で迎えられた瞬間

復職はゴールではなく、治療経過の一部です。
・業務量が元通り
・周囲からの期待が急に高まる
こうした状況は再発リスクを一気に高めます。車がいきなり時速100キロ出せないのと同様に、徐々に慣らしていき、通常の業務に戻っていく期間が必要です。

「配慮のつもり」が逆効果になるケース

職場の課題やメンタルヘルスの気づきを象徴する電球のイメージ画像
職場での「気づき」や判断の重要性を象徴するイメージ

本人の意思だけで就業可否を判断してしまう

「本人が大丈夫と言っているから」という理由だけでの判断は危険です。
精神科では、
・本人の自己評価
・実際の認知機能・集中力
・疲労の蓄積
が一致しないことがよくあります。

主治医の意見書を“そのまま“受け取ってしまう

意見書には、
・医療的な視点
・社会的配慮
が混在しています。産業医が介在せずに運用すると、現場に合わない対応になることが多々あります。意見書の内容の意図することを読み取ることが産業医の役割ではないかと日々の産業医業務を行なっていて感じます。例えば、残業禁止(3ヶ月)と記載があった場合は、本当に3ヶ月まるまる残業を行なっていけないのか、月の制限をもうければやっていいのかといったケースで実際は3ヶ月全く産業医ができないケースではなく、制限をもうけた上でなら本人も前向きな発言が見られているケースなど実際に面談をして主治医の意見を聴取し、本人の意向、会社側が求める意向等を整理し総合的に判断していくことが求められると感じます。

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精神科産業医の視点から見た「望ましい対応」

「症状」ではなく「業務への影響」で考える

重要なのは診断名よりも、
・集中力は保てるか
・判断力は低下していないか
・対人ストレスに耐えられるか
といった就業機能の評価を適切に行なっていくことが重要です。

段階的な復職と、明確な見直しポイントを設ける

・最初は業務量を抑える
・定期的に状態を把握する
・無理があればすぐに調整する
このケースバイケースに応じた「柔軟さ」が再発を防ぐと日々の産業医業務を通して感じます。

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企業側が知っておきたい、ひとつの事実

悪化の多くは「会社のせい」でも「本人のせい」でもない

精神科産業医として伝えたいのは、
多くのケースで、
悪化は“構造の問題“であって、誰かの責任ではない
ということです。
だからこそ、
・医学的視点
・職場の現実
・本人の状態をつなぐ存在が必要になります。

まとめ|「見えない悪化」を防ぐために

職場における思いやりや配慮、メンタルヘルス支援を象徴するハートのイメージ画像
従業員への配慮や支援の姿勢が、職場の安心感につながります

メンタル不調は、目に見える前に悪化していることがほとんどです。
・善意の声かけ
・形式的な配慮
・早すぎる復帰
これらが重なることで、状態は崩れます。
精神科産業医は、その「見えないズレ」を調整する役割を担っています。メンタル産業医センターではメンタル不調者へのオンライン面談及び産業医の選任を行なっております。お気軽にご相談ください。

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この記事の執筆者

Dr.Y(精神科医・産業医)

国立大学医学部を卒業後、都内の基幹病院で初期研修を修了。 その後、首都圏の急性期精神科病院に勤務し、 統合失調症、双極性障害、うつ病、依存症、認知症など 幅広い精神疾患の診療に従事。
現在は複数企業の選任産業医として、 復職支援、メンタルヘルス不調者対応、労務トラブル予防、 組織改善支援を行っている。

※本記事は精神科医・産業医としての専門的知見に基づき執筆しています。 個人が特定されないよう配慮し、プライバシー保護を最優先としています。

企業のメンタルヘルス対応で、判断に迷ったら

本記事は一般的な考え方をまとめたものです。 休職・復職対応、産業医面談、職場配慮の判断は、 企業の状況や従業員の状態によって異なります。

社内だけで判断が難しい場合は、 精神科専門の産業医に相談することで、 リスクを抑えた対応が可能になるケースもあります。

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