メンタル不調の社員が連絡を返さないときの対応

メンタル不調の社員が連絡を返さない場面で、人事や上司が取るべき対応を示したアイキャッチ画像
連絡が取れないときこそ、企業の対応力が問われます。

メンタル不調で休職中、あるいは休職直前の社員が電話やメールに返信しなくなる。 これは多くの企業で実際に起きている問題です。

「放置していいのか」「催促していいのか」「連絡し続けて大丈夫なのか」 対応を誤ると、労務トラブルやハラスメント認定につながるリスクもあります。

本記事では、精神科専門産業医の視点から、 社員が連絡を返さないときに企業が取るべき対応を、 実務・法務・メンタルヘルスの観点で解説します。

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メンタル不調の社員が連絡を返さなくなる理由

仕事や職場対応について考え悩むビジネスパーソンのイメージ画像
判断に迷う場面こそ、冷静な視点と専門的な助言が求められます

意図的に無視しているわけではない

メンタル不調の社員が連絡を返さない場合、多くは「無視」や「怠慢」ではありません。

  • メールを開く気力がない
  • 返信内容を考えられない
  • 会社からの連絡自体が強い不安を誘発する
  • 罪悪感・自己否定感が強く返信できない
  • 症状(うつ・不安・パニック)で行動できない

メンタル不調により連絡が取れなくなる背景には、発達特性によるコミュニケーションの困難さが関係しているケースもあります。
発達障害のある従業員への対応については、以下の記事で詳しく解説しています。

発達障害の従業員とどう接するか(全体像)

企業が最初に確認すべき3つのポイント

重要なポイントをわかりやすく示す女性スタッフのイメージ画像
ここから押さえておきたい重要なポイントを整理します

連絡が取れない=即問題ではない

まず、以下の点を冷静に整理してください。

  1. 休職中か、就業中か
  2. 主治医・産業医の関与があるか
  3. 緊急性(自傷・自殺リスク)があるか
準主幹記事(あわせて読みたい)
メンタル不調を理由とした休職・復職・就業可否の判断について、 企業が迷いやすいポイントを産業医の実務視点で整理した準主幹記事です。 主治医意見書の読み方や再発防止の考え方も解説しています。

連絡を取るべきか?取らないべきかの判断基準

判断に悩み頭を抱える企業担当者と人事担当者のイメージ
対応で判断に迷い、頭を抱える企業担当者。対応ルールがないとトラブルにつながることもあります。

原則は「頻繁な連絡はしない」

頻繁な連絡や催促は、症状を悪化させる可能性があります。

例外的に連絡すべきケース

  • 休職手続きが未完了
  • 診断書提出が必要
  • 安否確認が必要
  • 業務上の最低限の連絡事項がある

正しい連絡方法(実務で安全なやり方)

産業医や人事担当者が就業判断のために書類を確認・記入している様子
就業判断や配置転換では、記録と手順の整理が重要です。

おすすめの連絡手段

  • メール(記録が残る)
  • 書面(郵送)
  • 産業医・人事経由の間接連絡

避けるべき対応

  • 連日の電話
  • LINEなど私的ツール
  • 感情的な文面
  • 返信期限の強要
  • 上司からの直接連絡の繰り返し

連絡文面の書き方(トラブルを防ぐ)

安全な文面の例

「ご体調を最優先にお過ごしください。
会社からの連絡は必要最低限に限っています。
お返事はご無理のないタイミングで結構です。」

連絡が完全に途絶えた場合の対応

職場の課題やメンタルヘルスの気づきを象徴する電球のイメージ画像
職場での「気づき」や判断の重要性を象徴するイメージ

放置ではなく「記録」を残す

  • 連絡履歴の記録
  • 文書での連絡
  • 産業医への相談
  • 労務担当・社労士への共有
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産業医が介入すべきタイミング

産業医が社員の話を丁寧に聞き、面談を行っている様子
早めに相談することで、問題は大きくなりません。

企業だけで抱え込まない

  • 2週間以上連絡が取れない
  • 状態が不明
  • 再発を繰り返している

家族や緊急連絡先へ連絡してよいケース

本人と連絡が取れない場合でも、直ちに家族へ連絡してよいとは限りません。 ただし、生命や身体への危険が疑われる場合、長期間安否が確認できない場合、 就業規則や事前同意に基づく緊急連絡が必要な場合には、連絡を検討します。

企業がやってはいけないNG対応

産業医が解説する管理職がやってはいけないメンタル不調対応
メンタル不調対応では「良かれと思った行動」が逆効果になるケースがあります。

実際にトラブルになる例

  • 「連絡がない=復職意思なし」と判断する
  • 懲戒を示唆する
  • 不安を煽る表現を使う
  • 感情的な追及

ここまで基本的な対応を解説しましたが、実際の現場では判断に迷うケースも少なくありません。

連絡が取れない状態を放置するリスク

メンタル不調の社員から連絡がない状態を放置すると、以下のようなリスクが生じる可能性があります。

  • 状態悪化に気づけず、長期休職につながる
  • 無断欠勤としての扱いが不明確になり、労務トラブルに発展する
  • 安全配慮義務の観点から企業側の責任が問われる可能性がある

連絡が取れない状態は「様子を見る」ではなく、一定のルールのもとで対応を進める必要があります。

対応の判断目安(シンプル整理)

  • 数日以内 → 状況確認を継続
  • 1週間以上 → 記録を残しつつ対応強化
  • 長期化 → 就業規則・産業医を含めた判断

期間だけで判断するのではなく、症状・過去の経緯・連絡手段などを総合的に考慮することが重要です。

現場で確認しておきたいポイント

  • 連絡手段は複数試みたか(電話・メールなど)
  • 連絡内容・日時を記録しているか
  • 就業規則に基づいた対応になっているか
  • 過去の経緯(休職歴など)を踏まえているか

対応に迷いやすいグレーゾーン

メンタル不調の社員が連絡を返さない場合、現場では以下のような判断に迷うケースが多くあります。

  • どの程度の頻度で連絡すべきか
  • 自宅訪問や家族への連絡は許されるのか
  • 無断欠勤として扱ってよいのか
  • どの時点で就業規則に基づく対応が可能か

これらは一律の正解があるわけではなく、個別の状況(症状・関係性・就業状況)によって判断が大きく異なります。

対応に迷う場合は、専門的な視点での整理が重要になります。

社員への連絡文例

実際に社員へ連絡する際には、返信を強く求めるのではなく、連絡の目的と期限を明確に伝えることが重要です。体調への配慮を示しながら、本人が返信しやすい内容を心掛けましょう。

○○さん、体調はいかがでしょうか。現在の体調について詳しくお話しいただく必要はありません。会社として安否確認と今後の連絡方法を確認したいため、ご都合のよい方法で○月○日までにご返信をお願いいたします。電話でのやり取りが難しい場合は、メールで一言ご返信いただくだけでも構いません。お大事になさってください。

主幹記事(あわせて読みたい)
休職者対応だけでなく、未然防止や再発予防、職場環境の調整まで含めた企業のメンタルヘルス対策について、 産業医の実務視点からわかりやすく解説しています。

よくある質問

産業医と企業担当者が質問に答えているイメージ。職場のメンタルヘルス対策に関するよくある質問を説明するシーン。
企業のメンタルヘルスやストレスチェックに関する、よくある質問を分かりやすくまとめたQ&Aセクションです。

メンタル不調の社員が連絡を返さない場合、会社はどう対応すべきですか?

まずは、電話・メール・チャット・書面など複数の方法で連絡を試み、連絡した日時や内容を記録しておくことが重要です。いきなり懲戒や退職扱いに進めるのではなく、安否確認、就業状況の確認、受診状況の確認を段階的に行う必要があります。

連絡が取れない場合、自宅訪問をしてもよいですか?

状況によっては安否確認の一環として自宅訪問を検討することがあります。ただし、本人のプライバシーや心理的負担にも配慮が必要です。訪問する場合は、目的を安否確認に限定し、複数名で行うか、社内ルールに沿って慎重に対応することが望ましいです。

家族に連絡しても問題ありませんか?

緊急性が高い場合や、本人と連絡が取れず安否確認が必要な場合には、緊急連絡先として登録されている家族に連絡することがあります。ただし、本人の病状や詳細な勤務情報を不用意に伝えるのではなく、安否確認や連絡依頼に必要な範囲にとどめることが大切です。

連絡が取れない社員を無断欠勤として扱ってよいですか?

連絡がない状態が続けば、勤怠上は無断欠勤として整理せざるを得ない場合があります。ただし、メンタル不調が背景にある場合は、通常の無断欠勤と同じように機械的に処理するとトラブルになることがあります。診断書の有無、これまでの経緯、会社からの連絡状況を踏まえて慎重に判断します。

診断書が出ている社員が連絡を返さない場合はどうすればよいですか?

診断書が提出されている場合でも、会社として休職手続き、連絡方法、今後の見通しを確認する必要があります。本人への連絡が難しい場合は、書面で必要事項を伝えたり、家族や主治医への確認が必要かを検討したりします。ただし、主治医への連絡には本人同意が必要となることが一般的です。

本人がLINEやメールは見ているのに返信しない場合はどう考えればよいですか?

既読がついている、メールが届いていると考えられる場合でも、メンタル不調により返信する心理的負担が大きくなっていることがあります。一方で、会社として必要な連絡を無期限に待ち続けることもできません。返信期限や必要な手続きについて、文章で明確に伝えることが重要です。

連絡が取れない状態が続いた場合、休職命令を出せますか?

就業規則上の根拠や、勤務継続が困難と判断できる事情がある場合には、休職命令を検討することがあります。ただし、本人の状態を十分に確認できないまま一方的に判断するとトラブルになる可能性があります。診断書、勤怠状況、連絡記録、産業医意見などを整理したうえで判断することが望ましいです。

連絡が取れない社員を退職扱いにしてもよいですか?

連絡が取れないことを理由に直ちに退職扱いにするのは慎重であるべきです。就業規則の規定、無断欠勤の日数、会社からの連絡記録、本人のメンタル不調の有無などを確認する必要があります。特にメンタル不調が疑われる場合は、退職扱いや懲戒処分の前に、社労士・弁護士・産業医への相談が望ましいです。

産業医にはどのタイミングで相談すべきですか?

本人と連絡が取りづらくなった時点、診断書が提出された時点、休職命令や退職扱いを検討する前の段階で相談することが望ましいです。産業医に相談することで、医学的観点から安否確認、就業継続の可否、休職・復職の見通しを整理しやすくなります。

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産業医としての経験を踏まえて

メンタル不調への対応を仕組み化することで、組織が改善していく様子を示した上向き矢印の図
メンタル対応を「コスト」ではなく「投資」として設計した企業ほど、組織は回復していきます

産業医面談では、「社員から連絡が返ってこない」という相談を企業担当者から受けることがあります。 しかし、返信がないからといって、必ずしも本人が会社との連絡を意図的に拒否しているとは限りません。

メンタル不調が強い時期には、電話に出ることやメールを読むこと自体が大きな負担となり、 返信内容を考えられない、会社からの連絡を見ることが怖い、連絡しなければならないと分かっていても行動できない、 といった状態になることがあります。

一方で、会社側も本人の状態を把握できないまま放置することはできません。 安否確認や労務管理上の必要性を踏まえ、連絡手段を整理し、返信期限や連絡目的を分かりやすく伝えながら、 段階的に対応することが重要です。

実務上は、短期間に何度も電話やメールを送るよりも、 「何のための連絡なのか」「いつまでに、どの方法で返信してほしいのか」を明確にしたうえで、 本人の負担が比較的少ない方法を選ぶ方が、連絡が再開しやすいことがあります。

それでも連絡が取れず、体調悪化や安全面への懸念がある場合には、 緊急連絡先への確認や産業医への相談を検討します。 連絡がないことだけを理由に本人を責めたり、直ちに懲戒処分へ進めたりせず、 本人への配慮と会社として必要な対応の両方を整理することが大切です。

まとめ|連絡を取らない配慮も企業の責任

職場における思いやりや配慮、メンタルヘルス支援を象徴するハートのイメージ画像
従業員への配慮や支援の姿勢が、職場の安心感につながります

メンタル不調の社員が連絡を返さないとき、企業に求められるのは、一方的に管理を強めることではなく、本人の状態への配慮と、対応経過を記録することです。 短期間に何度も連絡したり、返信を強く迫ったりするのではなく、連絡の目的、方法、期限を整理したうえで、本人の負担に配慮しながら段階的に対応することが重要です。それでも連絡が取れない場合や、体調悪化・安全面への懸念がある場合には、緊急連絡先への確認や産業医への相談も検討します。適切な配慮と記録を積み重ねることが、社員だけでなく企業を守ることにもつながります。

この記事の執筆者

Dr.Y(精神科医・産業医)

国立大学医学部を卒業後、都内の基幹病院で初期研修を修了。 その後、首都圏の急性期精神科病院に勤務し、 統合失調症、双極性障害、うつ病、依存症、認知症など 幅広い精神疾患の診療に従事。
現在は複数企業の選任産業医として、 復職支援、メンタルヘルス不調者対応、労務トラブル予防、 組織改善支援を行っている。

※本記事は精神科医・産業医としての専門的知見に基づき執筆しています。 個人が特定されないよう配慮し、プライバシー保護を最優先としています。

企業のメンタルヘルス対応で、判断に迷ったら

本記事は一般的な考え方をまとめたものです。 休職・復職対応、産業医面談、職場配慮の判断は、 企業の状況や従業員の状態によって異なります。

社内だけで判断が難しい場合は、 精神科専門の産業医に相談することで、 リスクを抑えた対応が可能になるケースもあります。

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