メンタル不調によるレピュテーショナルリスク|企業の信用低下を防ぐための対応

社員のメンタル不調は、本人の健康管理や休職・復職だけの問題ではありません。会社の対応が不適切だった場合には、社内外で情報が広がり、企業の評判や採用、取引先からの信用に影響する可能性があります。こうした企業の評判に関するリスクは「レピュテーショナルリスク」と呼ばれます。ただし、メンタル不調者が出たこと自体が企業の評判を低下させるわけではありません。重要なのは、不調が生じた後に会社がどのように対応したかです。本記事では、メンタル不調によるレピュテーショナルリスクについて、産業保健の実務を踏まえて解説します。
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メンタル不調者が出ること自体は珍しくないこ

一定規模の会社であれば、メンタル不調による休職や治療が必要になる社員が出ることはあります。そのため、「休職者が出た=問題のある会社」と単純に考える必要はありません。
むしろ重要なのは、不調を把握した後に適切な休養や就業上の対応が行われているかという点です。
対応のまずさが企業の評判につながることがある

本人から体調不良の相談があったにもかかわらず放置した、休職を認めず勤務を続けさせた、健康情報を必要以上に周囲へ共有したなど、不適切な対応があると会社への不信感につながります。
健康問題そのものより、その後の会社の対応が問題になるケースには注意が必要です。
SNSによって社内の出来事が外部へ広がることもある
現在では、社員が職場で経験した出来事をSNSなどへ投稿することもあります。一度情報が広がると、会社側が事情を説明することが難しい場合もあります。
SNSへの投稿を防ぐことを目的にするのではなく、社員から説明を求められた際に、会社として合理的な対応を説明できる状態を作っておくことが重要です。
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採用活動への影響も考えられる
求職者は給与や仕事内容だけでなく、職場環境や働きやすさについても情報を集めています。口コミサイトやSNSなどで「体調を崩しても対応してもらえなかった」といった情報が広がれば、採用活動へ影響する可能性があります。
特に人材確保が難しい業界では、既存社員への適切な健康管理が採用面でも重要になります。
休職・復職対応のばらつきに注意する

同じような健康状態でも、部署や上司によって休職・復職への対応が大きく異なると、社員から不公平だと受け取られることがあります。
休職開始から復職判断、就業配慮まで基本的な手順を整理し、一定の基準で運用することが重要です。
健康情報の取り扱いにも注意する
メンタル不調に関する情報は慎重に取り扱う必要があります。本人の病名や治療内容を、業務上必要のない社員まで共有することは避けるべきです。
一方で、残業禁止などの就業配慮を実施するために、直属上司へ必要な情報を共有する場合もあります。誰にどこまで伝える必要があるのかを整理します。
会社と本人の認識の違いを放置しない

本人は「会社へ何度も相談した」と考えている一方、会社側には十分な記録が残っていないことがあります。こうした認識の違いが後から大きな対立につながることがあります。
重要な面談や就業上の判断については、経過や説明内容を適切に記録しておくことが大切です。
管理職の不用意な発言が問題になることもある
本人へ悪意がなくても、「みんな大変だから」「休まれると困る」といった発言が、体調の悪い社員をさらに追い込む場合があります。
管理職が健康問題を一人で判断せず、対応に迷った場合には人事や産業医へ相談できる体制を作ることが重要です。
紛争への発展がレピュテーショナルリスクを高める

メンタル不調をめぐって会社と本人の対立が深まると、労災申請や労務紛争などへ発展する場合があります。
法的な問題とは別に、紛争の内容が社内外へ広がれば企業イメージへ影響する可能性があります。初期段階から丁寧に説明し、必要な記録を残すことが重要です。
問題を隠すことがリスク対策ではない
企業の評判を守るために、メンタル不調者の存在や職場の問題を隠そうとすることは適切な対策ではありません。
むしろ問題が生じた際に事実を確認し、必要な改善を行える組織であることが重要です。特定部署で不調者が続いている場合には、業務量や人員配置なども振り返ります。
産業医との連携が対応の客観性につながる

メンタル不調への対応を人事や直属上司だけで判断すると、健康状態の評価が難しい場合があります。
産業医が本人の健康状態と仕事内容を確認し、必要な就業上の配慮について医学的な意見を示すことで、会社側も判断の根拠を整理しやすくなります。
平時からメンタルヘルス対応を整えておく
レピュテーショナルリスクへの対応は、問題が外部へ広がってから始めるものではありません。相談窓口、休職制度、復職手順、産業医面談などを平時から整備しておくことが重要です。
制度があるだけでなく、実際に社員が利用できる運用になっているかも確認する必要があります。
これまでの産業医経験を踏まえて

これまで産業医として企業のメンタルヘルス対応に関わっていると、本人の健康状態そのものより、会社とのコミュニケーションの行き違いによって問題が大きくなるケースがあります。「相談したのに対応してもらえなかった」と本人が感じている一方で、会社側は必要な対応をしていたと考えていることもあります。このような場合、判断の経緯や説明が十分に記録されているかが重要になります。企業の評判を守るために問題を隠すのではなく、健康問題が起きたときに適切に対応し、その理由を説明できる体制を作っておくことが、結果としてレピュテーショナルリスクの低減にもつながると考えています。
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まとめ

メンタル不調によるレピュテーショナルリスクは、不調者が出たこと自体よりも、その後の会社の対応によって高まることがあります。相談への対応、健康情報の管理、休職・復職の運用、本人への説明などを丁寧に行うことが重要です。問題を隠すのではなく、必要な対応を行い、その経緯を客観的に説明できる体制を整えることが、社員の健康を守るだけでなく企業の信用を守ることにもつながります。
この記事の執筆者
Dr.Y(精神科医・産業医)
国立大学医学部を卒業後、都内の基幹病院で初期研修を修了。
その後、首都圏の急性期精神科病院に勤務し、
統合失調症、双極性障害、うつ病、依存症、認知症など
幅広い精神疾患の診療に従事。
現在は複数企業の選任産業医として、
復職支援、メンタルヘルス不調者対応、労務トラブル予防、
組織改善支援を行っている。
※本記事は精神科医・産業医としての専門的知見に基づき執筆しています。 個人が特定されないよう配慮し、プライバシー保護を最優先としています。
企業のメンタルヘルス対応で、判断に迷ったら
本記事は一般的な考え方をまとめたものです。 休職・復職対応、産業医面談、職場配慮の判断は、 企業の状況や従業員の状態によって異なります。
社内だけで判断が難しい場合は、 精神科専門の産業医に相談することで、 リスクを抑えた対応が可能になるケースもあります。
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