メンタル対策のKPI|企業が確認すべき指標と効果測定の進め方

メンタル対策のKPIと休職率、再休職率、長時間労働、産業医面談、就業配慮の実施状況について解説する記事の画像
メンタル対策のKPIでは、休職者数や相談件数だけでなく、長時間労働の改善や就業配慮の実施状況など、実際の職場改善につながる指標を確認することが重要です。

企業がメンタルヘルス対策を進める際、相談窓口の設置や産業医面談の実施だけで終わってしまうことがあります。しかし、対策を継続的に改善するためには、実際にどのような変化が生じているのかを確認することが重要です。その際に役立つのがKPI(重要業績評価指標)です。ただし、メンタル対策では休職者数や相談件数など、単純に増減だけで評価できない指標もあります。本記事では、メンタル対策のKPIの設定方法と、企業が確認すべき指標について、産業医の実務を踏まえて解説します。

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メンタル対策におけるKPIとは

判断に悩み頭を抱える企業担当者と人事担当者のイメージ
対応で判断に迷い、頭を抱える企業担当者。対応ルールがないとトラブルにつながることもあります。

KPIとは、目標の達成状況を確認するために設定する指標です。メンタルヘルス対策では、社員の健康管理体制が機能しているか、職場環境の改善が進んでいるかなどを評価するために活用します。

重要なのは、数値を改善すること自体を目的にしないことです。社員の健康を守り、安定して働ける職場環境を整えるという本来の目的に沿って設定する必要があります。

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メンタル対策のKPIを設定する理由

メンタル対策の効果は、売上や利益のように短期間で明確な数値として表れないことがあります。そのため、取り組みの進捗を確認する指標が必要になります。

例えば、長時間労働者の減少や面談後の就業配慮の実施状況などを確認すれば、会社が必要な対応を進めているかを把握しやすくなります。

休職者数と休職率

仕事や職場対応について考え悩むビジネスパーソンのイメージ画像
判断に迷う場面こそ、冷静な視点と専門的な助言が求められます

メンタル不調による休職者数や休職率は、企業が確認しやすい指標の一つです。

ただし、休職者が増えたことだけで職場環境が悪化したとは判断できません。これまで無理をして勤務していた社員が適切に休職できるようになった可能性もあります。

社員数や集計期間を統一し、複数年の推移を確認することが重要です。

再休職率を確認する

復職後に再び休職する社員の割合も、復職支援の状況を確認するうえで参考になります。

ただし、再休職には疾患の経過や仕事以外の要因も関係します。再休職率だけで復職支援の良し悪しを判断することは適切ではありません。

復職後の残業制限や業務調整、フォロー面談が実施されているかも併せて確認する必要があります。

長時間労働者の割合

職場の課題やメンタルヘルスの気づきを象徴する電球のイメージ画像
職場での「気づき」や判断の重要性を象徴するイメージ

長時間労働は、睡眠不足や疲労の蓄積を通じて健康に影響する可能性があります。そのため、一定時間以上の時間外・休日労働を行っている社員の人数や割合を把握することが重要です。あ

例えば、月80時間を超える時間外・休日労働者の人数を継続的に確認する方法があります。ただし、法令上の面接指導の要件と、会社独自の健康管理上の基準は区別して運用する必要があります。

産業医面談の実施状況

産業医面談の件数や実施率も、健康管理体制の運用状況を確認する指標になります。

ただし、面談件数が多いほど良いわけではありません。相談件数の増加は、不調者の増加だけでなく、相談しやすい環境が整った結果である可能性もあります。

面談が必要な社員に適切な機会が提供されているかを確認することが重要です。

就業配慮の実施率

産業医や人事担当者が就業判断のために書類を確認・記入している様子
就業判断や配置転換では、記録と手順の整理が重要です。

産業医が残業制限や業務負担の調整などを提案した場合、実際に会社が対応できているかを確認することが重要です。

例えば、必要な就業配慮について、会社として対応方針を決定し、実施状況を確認できた割合をKPIとする方法があります。

産業医面談の件数だけでなく、面談後の対応まで確認することで、実効性を評価しやすくなります。

ストレスチェックの結果を活用する

ストレスチェックの集団分析結果は、職場環境の傾向を把握するための参考情報になります。

高ストレス者の割合や仕事の負担、職場の支援に関する指標などを継続的に確認する方法があります。ただし、結果は回答状況や職場の構成によって変化するため、数値だけで原因を断定することはできません。

個人が特定されないよう、集計単位や情報管理にも配慮する必要があります。

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離職率とメンタル対策の関係

離職率も組織の状態を把握するための指標の一つです。ただし、退職理由は給与、仕事内容、家庭の事情などさまざまであり、離職率の変化をメンタル対策の効果と直接結び付けることはできません。

特定の部署で離職が続いている場合には、業務量や管理職の対応、人間関係などを確認することが重要です。

管理職の対応状況をKPIにする

産業医が社員の話を丁寧に聞き、面談を行っている様子
早めに相談することで、問題は大きくなりません。

メンタル対策では、管理職が社員の不調に気付き、必要な相談先へつなげられることも重要です。

管理職研修の受講率や相談ルートの周知率、必要な案件が人事や産業医へ適切につながった割合などを確認する方法があります。

研修の実施回数だけでなく、実際の対応に役立っているかを評価する必要があります。

KPIを増やしすぎない

メンタル対策では、さまざまな指標を設定できますが、最初から多くの数値を管理しようとすると担当者の負担が大きくなります。

まずは、長時間労働者の状況、休職・再休職の推移、相談体制の運用状況、就業配慮の実施状況など、企業の課題に合った指標を3〜5項目程度選ぶ方法が現実的です。

数値を継続して把握できることも重要になります。

中小企業におすすめのKPI設定例

デスクに置かれた聴診器とパソコン周辺機器。産業医による健康管理やメンタルヘルス支援、職場の健康づくりをイメージした画像。
産業医による健康管理やメンタルヘルス対策は、働く人が安心して働ける職場づくりにつながります。

中小企業では、社員数が少ないため、休職者が一人増えるだけで休職率が大きく変動する場合があります。そのため、結果指標だけでなく、会社が実際に取り組める行動指標も設定することが重要です。

  • 長時間労働者数:毎月確認し、増加した部署の業務負担を見直す
  • 必要な産業医面談の実施率:対象者が適切に面談を受けられたか確認する
  • 就業配慮の対応状況:必要な配慮が実施されているか確認する
  • 管理職研修の受講率:管理職が相談手順を理解する機会を確保する
  • 休職・再休職の推移:一定期間の傾向を確認する

目標値は企業の現状を踏まえて設定し、定期的に見直すことが望まれます。

KPIを人事評価や社員の監視に使わない

メンタル対策のKPIを運用する際には、社員が相談しにくくなる仕組みをつくらないことが重要です。

例えば、部署の相談件数や休職者数を管理職の評価に単純に結び付けると、不調者の報告をためらうなどの問題につながるおそれがあります。

KPIは社員を評価するためではなく、会社の健康管理体制を改善するために活用する必要があります。

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休職者対応だけでなく、未然防止や再発予防、職場環境の調整まで含めた企業のメンタルヘルス対策について、 産業医の実務視点からわかりやすく解説しています。

これまでの産業医経験を踏まえて

青空と緑豊かな木々が広がる自然風景。働く人の健康や職場環境、メンタルヘルスをイメージした画像。
働く人が安心して力を発揮できる職場づくりには、心身の健康と良好な職場環境が大切です。

これまで30社以上の企業で産業医として対応してきた経験から、メンタル対策のKPIでは、面談件数や休職者数だけでなく、その後の会社の対応を確認することが重要だと考えています。例えば、産業医面談で残業制限や業務負担の調整を提案しても、実際の職場で対応が行われなければ、社員の負担は十分に軽減されません。また、相談件数が増加した場合でも、相談体制が整ったことで早期に不調を把握できるようになった可能性があります。数字だけで良し悪しを判断するのではなく、個々の指標が何を意味しているのかを確認することが重要です。特に中小企業では、少数のKPIを継続的に確認し、必要な改善につなげることが現実的だと考えています。

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まとめ

職場における思いやりや配慮、メンタルヘルス支援を象徴するハートのイメージ画像
従業員への配慮や支援の姿勢が、職場の安心感につながります

メンタル対策のKPIには、休職率、再休職率、長時間労働者の割合、産業医面談の実施状況、就業配慮の実施率、ストレスチェックの結果などがあります。ただし、数値の増減だけでメンタル対策の成果を判断することは適切ではありません。企業の課題に合った指標を設定し、継続的に確認することが重要です。人事、管理職、経営者、産業医が連携し、KPIを実際の職場環境の改善につなげることが、実効性のあるメンタルヘルス対策につながります。

この記事の執筆者

Dr.Y(精神科医・産業医)

国立大学医学部を卒業後、都内の基幹病院で初期研修を修了。 その後、首都圏の急性期精神科病院に勤務し、 統合失調症、双極性障害、うつ病、依存症、認知症など 幅広い精神疾患の診療に従事。
現在は複数企業の選任産業医として、 復職支援、メンタルヘルス不調者対応、労務トラブル予防、 組織改善支援を行っている。

※本記事は精神科医・産業医としての専門的知見に基づき執筆しています。 個人が特定されないよう配慮し、プライバシー保護を最優先としています。

企業のメンタルヘルス対応で、判断に迷ったら

本記事は一般的な考え方をまとめたものです。 休職・復職対応、産業医面談、職場配慮の判断は、 企業の状況や従業員の状態によって異なります。

社内だけで判断が難しい場合は、 精神科専門の産業医に相談することで、 リスクを抑えた対応が可能になるケースもあります。

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