休職を本人が拒否したとき|会社が取るべき対応と注意点

従業員の体調不良やメンタル不調が明らかで、会社としては休職が必要だと考えているにもかかわらず、本人が休職を拒否することがあります。 「まだ働けます」「休むと評価が下がるのではないか」「収入が減るのが困る」といった理由から、本人が勤務継続を希望するケースです。
しかし、本人が休職を拒否しているからといって、会社がそのまま勤務を続けさせてよいとは限りません。 勤務継続によって病状が悪化する可能性がある場合や、業務遂行に支障が出ている場合には、会社として安全配慮義務の観点から対応を検討する必要があります。
休職を本人が拒否した場合には、本人の意思を尊重しつつも、現在の症状、勤務状況、業務への影響、主治医や産業医の意見、就業規則上の休職命令の可否などを整理し、客観的に判断することが重要です。
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本人が休職を拒否する主な理由

休職が必要と思われる状態でも、本人が休職を拒否する背景にはさまざまな理由があります。 まずは、本人がなぜ休職を拒んでいるのかを確認することが大切です。
収入や生活への不安がある
休職に入ると、給与が減額されたり、傷病手当金の申請が必要になったりする場合があります。 そのため、本人が経済的な不安から休職を拒否することがあります。
この場合、会社としては給与規程、休職中の処遇、傷病手当金の制度、社会保険料の扱いなどを丁寧に説明し、不安を軽減することが重要です。
評価やキャリアへの影響を心配している
本人が「休職すると評価が下がる」「昇進に影響する」「職場に迷惑をかける」と考え、無理をして勤務を続けようとすることがあります。 特に責任感が強い従業員ほど、自分の不調を過小評価し、休職を避けようとすることがあります。
会社としては、休職は懲罰ではなく、治療と回復のための制度であることを説明する必要があります。
自分の不調を十分に認識できていない
メンタル不調では、本人が自分の状態を正確に把握できていないことがあります。 周囲から見ると明らかに疲弊している、ミスや欠勤が増えている、表情や言動に変化があるにもかかわらず、本人は「大丈夫です」と話す場合があります。
このような場合、本人の自己申告だけで勤務継続を判断すると、状態悪化を見逃す可能性があります。
会社がまず確認すべきこと

本人が休職を拒否した場合でも、会社は感情的に説得したり、本人の意思だけで判断したりするのではなく、必要な情報を整理する必要があります。
現在の勤務状況
欠勤、遅刻、早退が増えていないか、業務の遅れやミスが生じていないか、勤務中の集中力や判断力に問題がないかを確認します。 本人が「働ける」と話していても、勤務実態として安定していない場合には、休職を検討する必要があります。
業務への具体的な支障
体調不良が業務にどのような影響を与えているのかを具体的に整理します。 たとえば、報告ができない、対人対応が難しい、顧客対応でトラブルが増えている、判断業務ができない、業務量に耐えられないといった支障がある場合には、勤務継続に慎重な判断が必要です。
安全配慮上のリスク
会社には、従業員が安全かつ健康に働けるよう配慮する義務があります。 勤務を続けることで本人の病状が悪化する可能性が高い場合や、本人または周囲の安全に影響する可能性がある場合には、本人が希望していても、会社として勤務継続を認めない判断が必要になることがあります。
本人の拒否だけで勤務継続を認めるリスク

本人が休職を拒否しているからといって、そのまま勤務を続けさせると、会社にとっても本人にとってもリスクがあります。
病状が悪化する可能性がある
休養が必要な状態で勤務を続けると、不眠、抑うつ、不安、集中力低下などが悪化し、結果としてより長期の休職が必要になることがあります。 早期に休職していれば短期間で回復できた可能性があるケースでも、無理を続けたことで復職まで時間がかかることがあります。
職場でのトラブルが増える可能性がある
メンタル不調が悪化すると、報告・連絡・相談が滞る、対人トラブルが増える、業務上のミスが増えるなど、職場全体に影響が出ることがあります。 本人のために勤務継続を認めたつもりでも、結果的に本人の評価や職場での関係性を悪化させてしまうことがあります。
会社の安全配慮義務が問題になる可能性がある
会社が不調を把握していたにもかかわらず、必要な対応を取らずに勤務を続けさせた場合、後から安全配慮義務違反が問題になる可能性があります。 本人が勤務継続を希望していたとしても、会社が明らかなリスクを放置してよいわけではありません。
休職命令を検討する場面

会社によっては、就業規則に基づき、本人の申し出がなくても休職を命じることができる場合があります。 ただし、休職命令を出す場合には、客観的な根拠と適切な手続きが重要です。
通常勤務が明らかに困難な場合
欠勤や遅刻が続いている、業務遂行が著しく困難、勤務中の判断力や集中力に問題があるなど、通常勤務が明らかに難しい場合には、休職命令を検討することがあります。
勤務継続により悪化が見込まれる場合
本人が勤務を希望していても、主治医や産業医の意見から勤務継続により病状悪化が見込まれる場合には、会社として休職を検討する必要があります。 特に不眠が強い、抑うつ症状が重い、希死念慮が疑われる、極端な疲弊がある場合には慎重な対応が必要です。
就業規則上の根拠を確認する
休職命令を行う場合には、就業規則に休職命令の根拠があるかを確認します。 休職の開始要件、診断書の提出、会社指定医や産業医面談、休職期間、休職期間満了時の扱いなどが明確になっているかが重要です。
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休職を拒否する本人への説明方法

本人が休職を拒否している場合、会社は一方的に休職を押し付けるのではなく、丁寧に説明し、納得を得る努力をすることが大切です。
休職は懲罰ではないと伝える
本人が休職を拒む背景には、「休職させられることは悪い評価なのではないか」という不安があります。 会社としては、休職は処分ではなく、治療と回復のための制度であることを明確に伝える必要があります。
勤務継続によるリスクを具体的に説明する
単に「休んでください」と伝えるだけでは、本人が納得しにくいことがあります。 欠勤が増えている、業務ミスが目立つ、睡眠不良が強い、職場での負荷が高いなど、勤務継続が本人にとって負担になっている理由を具体的に説明することが重要です。
復職までの流れを説明する
休職に入ると、その後どうなるのかが分からないと、本人の不安は強くなります。 休職期間中の連絡方法、診断書の提出、主治医との連携、復職前面談、産業医面談、復職後の配慮など、復職までの流れを説明しておくことが大切です。
産業医面談を活用する重要性

本人が休職を拒否している場合、会社と本人だけで話し合うと、感情的な対立になりやすいことがあります。 そのため、産業医面談を活用し、医学的な観点から就業可否を整理することが有効です。
本人の状態を客観的に確認できる
産業医面談では、現在の症状、睡眠、食欲、通院状況、服薬状況、勤務状況、業務への影響などを確認します。 本人の「働ける」という希望だけではなく、実際に安全に働ける状態かを医学的に評価します。
就業配慮で足りるか休職が必要かを整理できる
必ずしも休職が必要とは限らず、残業制限、業務量調整、対人負荷の軽減などで勤務継続が可能な場合もあります。 一方で、配慮をしても勤務が安定しない場合や、悪化リスクが高い場合には、休職が妥当と判断されることがあります。
会社の判断根拠を明確にしやすい
休職を本人が拒否している場面では、会社としてなぜ休職が必要と判断したのかを後から説明できることが重要です。 産業医の意見を踏まえることで、会社の判断過程を整理しやすくなります。
産業医経験を踏まえた実務上のポイント

産業医として休職判断に関わっていると、本人が休職を拒否するケースは珍しくありません。 特に責任感が強い従業員や、職場に迷惑をかけたくないと考える従業員ほど、明らかに不調があっても「大丈夫です」と話すことがあります。
本人の意思と就業可能性は分けて考える
本人の勤務継続の意思は尊重すべきですが、それだけで就業可能と判断することはできません。 本人が働きたいと言っていても、睡眠が取れていない、業務ミスが増えている、欠勤が続いている、表情や言動に明らかな変化がある場合には、休職を含めて検討する必要があります。
会社側の不安を事実ベースで整理する
会社が「このまま働かせるのは不安」と感じている場合、その不安を具体的な事実に落とし込むことが重要です。 欠勤日数、遅刻回数、業務ミス、周囲とのトラブル、上司の観察内容などを整理することで、産業医面談でも判断しやすくなります。
休職を拒否された時点で早めに専門家へ相談する
本人が休職を拒否している状態で会社だけが対応を続けると、感情的な対立や労務トラブルにつながることがあります。 早めに産業医や社労士へ相談し、医学的な判断と就業規則上の対応を整理しておくことが望ましいです。
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まとめ

休職を本人が拒否した場合でも、会社がそのまま勤務継続を認めてよいとは限りません。 本人の意思は尊重しつつも、現在の症状、勤務状況、業務への支障、安全配慮上のリスクを総合的に確認する必要があります。
本人が「働ける」と話していても、勤務継続によって病状悪化が見込まれる場合や、通常業務が安定して行えない場合には、就業規則や産業医意見を踏まえて休職を検討することが重要です。
休職を本人が拒否するケースでは、会社と本人だけで話し合うと対立しやすくなります。 産業医面談を活用し、医学的な観点から就業可否を整理することで、本人の保護と会社のリスク管理の両面で適切な対応を取りやすくなります。
この記事の執筆者
Dr.Y(精神科医・産業医)
国立大学医学部を卒業後、都内の基幹病院で初期研修を修了。
その後、首都圏の急性期精神科病院に勤務し、
統合失調症、双極性障害、うつ病、依存症、認知症など
幅広い精神疾患の診療に従事。
現在は複数企業の選任産業医として、
復職支援、メンタルヘルス不調者対応、労務トラブル予防、
組織改善支援を行っている。
※本記事は精神科医・産業医としての専門的知見に基づき執筆しています。 個人が特定されないよう配慮し、プライバシー保護を最優先としています。
企業のメンタルヘルス対応で、判断に迷ったら
本記事は一般的な考え方をまとめたものです。 休職・復職対応、産業医面談、職場配慮の判断は、 企業の状況や従業員の状態によって異なります。
社内だけで判断が難しい場合は、 精神科専門の産業医に相談することで、 リスクを抑えた対応が可能になるケースもあります。
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