休職開始時に渡す書面|会社が用意すべき資料と記載項目

従業員がメンタル不調や体調不良によって休職へ入る際、会社は休職開始面談を行い、休職中の処遇や手続きについて説明することがあります。
ただし、休職直前の本人は、不眠、不安、抑うつ、疲労、集中力低下などにより、口頭で説明された内容を十分に理解したり、後から思い出したりすることが難しい場合があります。
そのため、休職開始時には、休職開始日、休職期間、会社との連絡方法、診断書の更新、傷病手当金、復職手続きなどをまとめた書面を渡しておくことが重要です。
書面は、本人を管理するためのものではありません。会社と本人の認識のずれを防ぎ、本人が安心して治療と療養に専念できる環境を整えるための資料です。
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休職開始時に書面を渡す目的
休職開始時に渡す書面には、休職制度や今後の手続きを分かりやすく整理し、会社と本人双方の混乱を防ぐ目的があります。
口頭説明だけでは残りにくいため
休職開始面談では、給与、社会保険料、傷病手当金、診断書、連絡方法、復職手続きなど、多くの事項を説明します。
しかし、本人の体調が悪い場合には、説明を受けても一度で理解できないことがあります。後から確認できる書面を渡すことで、本人の負担を減らしやすくなります。
会社と本人の認識のずれを防ぐため
「診断書の提出期限を聞いていない」「休職期間満了日を知らなかった」「主治医の診断書があれば自動的に復職できると思っていた」といった認識の違いは、後のトラブルにつながります。
会社が説明した事項を書面にまとめることで、休職中や復職時の認識のずれを防ぎやすくなります。
本人が安心して療養するため
休職に入る従業員は、収入、社会保険料、職場復帰、会社からの連絡などに不安を抱えていることがあります。
必要な制度や手続きを明確に示すことで、本人が先の見通しを持ち、治療や療養に専念しやすくなります。
休職開始時に渡す主な書面

会社の規模や制度によって異なりますが、一般的には次のような書面を用意します。
休職通知書または休職命令通知書
休職開始日、休職期間、就業規則上の根拠、休職中の取扱いなどを記載した書面です。
本人の申出に基づく休職なのか、会社が休職を命じるのかによって、文書の名称や表現を調整します。
- 本人の休職申出に基づく場合:休職通知書
- 会社が就業規則に基づき命じる場合:休職命令通知書
休職制度の案内書
休職中の給与、社会保険料、傷病手当金、会社との連絡、診断書更新、復職手続きなどを一覧でまとめた資料です。
就業規則の条文をそのまま渡すだけでは本人が理解しにくいことがあるため、実際の手続きを簡潔にまとめた案内書があると役立ちます。
休職中の連絡に関する確認書
会社側の連絡担当者、本人が希望する連絡方法、連絡頻度、次回連絡予定日などを記載します。
休職中に複数の上司や担当者から連絡が入ると本人の負担になるため、連絡窓口を一本化することが望ましいです。
診断書提出に関する案内
休職期間を延長する場合の診断書の提出期限、提出方法、必要な記載内容などを説明する資料です。
診断書の作成費用を会社と本人のどちらが負担するかについても、自社の規程に沿って明記しておくとよいでしょう。
傷病手当金の申請書類
休職中に給与が支払われない場合などには、健康保険の傷病手当金を申請できる可能性があります。
傷病手当金支給申請書、提出先、会社が記入する箇所、申請の流れを案内します。ただし、最終的な支給判断は加入する健康保険側が行うため、支給を断定しないようにします。
復職手続きの案内書
復職を希望する際に必要となる手続きをまとめた書面です。
- 会社への復職申出
- 主治医の復職可能診断書
- 産業医面談
- 復職判定面談
- 会社による最終的な就業可否判断
休職開始時点で復職の手続きを説明しておくことで、回復後に本人が何をすればよいか分かりやすくなります。
休職通知書に記載すべき内容
休職通知書または休職命令通知書には、少なくとも次の項目を記載しておくことが望ましいです。
休職開始日
いつから休職扱いとなるのかを明記します。 最終出勤日、有給休暇の利用期間、診断書の療養開始日などとの関係も整理します。
休職期間
当面の休職期間と、就業規則上の休職期間満了日を明確にします。
診断書に記載された療養期間と、会社の休職制度上の期間は同じものではありません。両者を混同しない表現にすることが重要です。
就業規則上の根拠
「就業規則第○条に基づき」など、休職の根拠となる条文を記載します。
実際の就業規則と通知書の内容が一致しているか、事前に確認する必要があります。
休職中の処遇
給与、賞与、社会保険料、住民税、有給休暇などの取扱いを記載します。
詳細を別紙の案内書で説明する場合には、「休職期間中の処遇は別紙および就業規則による」と記載する方法もあります。
休職期間満了時の取扱い
休職期間満了時に復職できない場合の取扱いを、就業規則に沿って説明します。
自然退職や退職扱いとなる規定がある場合でも、本人を不必要に不安にさせる表現や、退職を迫るような書き方は避けます。
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休職制度の案内書に記載すべき内容

本人向けの案内書は、就業規則をそのまま引用するのではなく、実際の手続きが分かる構成にするとよいでしょう。
休職期間中の給与
- 給与が支給されるか
- 無給となる時期
- 有給休暇を使用できるか
- 賞与の査定への影響
社会保険料と住民税
- 社会保険料の本人負担額
- 給与控除できない場合の支払方法
- 振込先
- 支払期限
- 住民税の取扱い
傷病手当金
- 制度の概要
- 申請書の入手方法
- 本人・主治医・会社が記入する箇所
- 申請書の提出先
- 会社の担当窓口
会社との連絡
- 会社側の連絡担当者
- 担当者の連絡先
- 連絡方法
- 連絡頻度
- 次回連絡予定日
診断書の更新
- 次回の提出期限
- 提出方法
- 必要な記載内容
- 提出が遅れる場合の連絡方法
復職手続き
- 復職希望時の申出期限
- 主治医診断書の提出
- 産業医面談の有無
- 復職判定の流れ
- 復職後の就業配慮
休職中の連絡方法を記載する際の注意点

休職中の連絡は、会社の状況確認に必要ですが、本人の療養を妨げないよう配慮する必要があります。
連絡窓口を一本化する
直属の上司、人事担当者、複数の同僚から別々に連絡すると、本人の負担が大きくなります。
原則として人事労務担当者など一人を窓口とし、社内でも本人への連絡方法を共有しておきます。
連絡頻度を明確にする
「必要に応じて連絡する」とだけ記載すると、本人はいつ連絡が来るのか不安になることがあります。
「原則として月1回」「次回は○月○日頃」など、一定の目安を示すことが望ましいです。
業務連絡を控えることを伝える
休職中に業務の質問や引き継ぎ依頼を繰り返すと、本人が仕事から離れて休養できなくなります。
緊急かつ最低限の確認を除き、業務連絡を控える運用を社内で徹底します。
復職手続きの案内で注意すべきこと

主治医診断書だけで復職が決まると誤解させない
主治医の復職可能診断書は重要な資料ですが、それだけで自動的に復職が決まるわけではありません。
会社は、実際の業務内容、本人の状態、産業医意見、必要な配慮などを踏まえて最終的な就業可否を判断します。
復職申出の期限を明確にする
復職希望日の直前に申出があると、産業医面談や職場調整が間に合わないことがあります。
復職希望日の何週間前までに申し出る必要があるかを、書面に記載しておくとよいでしょう。
復職後の配慮は個別に判断すると伝える
残業制限、業務量調整、短時間勤務などの配慮は、本人の状態や会社の制度に応じて判断します。
休職開始時点で特定の配慮を約束するのではなく、復職判定時に改めて検討することを説明します。
休職開始時に渡す書面の文例

以下は、本人へ渡す休職案内書の簡単な文例です。実際には、自社の就業規則や処遇に合わせて修正してください。
休職に関するご案内
このたびの休職にあたり、休職期間中の手続きおよび今後の連絡方法について、以下のとおりご案内します。
1.休職開始日
令和○年○月○日
2.当面の休職期間
令和○年○月○日から令和○年○月○日まで
3.会社の連絡窓口
担当者:人事部 ○○ ○○
連絡先:○○○○
4.休職中の連絡
原則として月1回、メールにより療養状況および次回受診予定を確認します。次回の連絡は令和○年○月○日頃を予定しています。
5.診断書の提出
休職期間の延長が必要な場合には、令和○年○月○日までに新しい診断書を提出してください。
6.休職中の給与等
休職期間中の給与、社会保険料、住民税および傷病手当金については、別紙の案内をご確認ください。
7.復職手続き
復職を希望する場合には、復職希望日の○週間前までに会社へ申し出てください。主治医の復職可能診断書をご提出いただいた後、必要に応じて産業医面談および復職判定面談を実施します。
ご不明な点がある場合には、上記の会社連絡窓口までお問い合わせください。
書面に記載しすぎない方がよい内容
詳細な病名や治療内容
本人へ渡す書面に、病名、服薬内容、過去の病歴などを詳細に記載する必要はありません。
会社の手続きに必要な療養期間や就業上の取扱いを中心に記載します。
退職を前提とした表現
「復職できなければ退職となる」「復職は困難と思われる」など、休職開始時点で退職を強く意識させる表現は慎重に扱う必要があります。
就業規則上の期間満了時の取扱いは説明しつつ、休職は治療と回復のための制度であることが伝わる表現にします。
本人に過度な報告を求める内容
毎週の詳細な症状報告、毎日の生活記録、治療内容の逐次報告などを一律に求めると、本人の療養を妨げる可能性があります。
会社が求める報告は、療養状況、次回受診予定、診断書の更新など、労務管理に必要な範囲に絞ります。
書面を渡す際の実務上の注意点

面談時に要点を説明する
書面を渡すだけでは、本人が重要な内容を理解できないことがあります。
休職開始日、会社の連絡窓口、次回連絡日、診断書の提出期限、復職時の手続きを中心に、面談で簡潔に説明します。
本人の体調に応じて説明量を調整する
本人が強く疲弊している場合には、長時間の説明を避け、重要事項だけを伝えます。
残りの内容は書面で確認してもらい、後日質問を受け付ける方法もあります。
会社控えを保管する
本人へ渡した書面の写し、交付日、説明した担当者などを会社側でも記録しておきます。
後から書面の内容が改訂された場合には、どの版を本人へ渡したのか分かるように管理することが望ましいです。
就業規則との整合性を確認する
書面に記載された休職期間、処遇、復職手続きが、就業規則や賃金規程と一致しているか確認します。
担当者の判断で、規程にない義務や手続きを追加しないよう注意します。
これまでの産業医経験を踏まえた実務上のポイント

これまで産業医として休職開始面談に関わっていると、会社が口頭では丁寧に説明していても、本人が後からほとんど内容を覚えていないケースがあります。
本人が後から確認できる簡潔な書面が重要
休職直前は、不眠、抑うつ、不安、集中力低下などによって、多くの説明を一度に理解することが難しいことがあります。
実務上は、情報量の多い就業規則を渡すだけではなく、連絡担当者、次回連絡日、診断書提出期限、復職手続きなどを1枚から数枚にまとめた案内書が特に役立ちます。
会社向け資料と本人向け資料を分ける
会社内部では、判断経過、診断書の内容、産業医意見などを記録する必要があります。 一方で、本人へ渡す書面は、本人が行う手続きや問い合わせ先を分かりやすく示すことが中心です。
一つの書面ですべてを管理しようとすると、本人に不要な医学情報や社内判断まで記載されることがあります。用途に応じて資料を分けることが実務上は有効です。
次に何をすればよいかを明確にする
書面を作成する際に最も重要なのは、本人が次の行動を理解できることです。
「次回はいつ会社から連絡があるのか」「診断書はいつまでに提出するのか」「復職したい場合は誰へ連絡するのか」が明確であれば、休職中の混乱を減らしやすくなります。
書面だけで完結させない
書面は重要ですが、本人の状態や疑問を無視して一方的に渡すだけでは十分ではありません。
短時間でも面談の機会を設け、本人の希望する連絡方法や金銭面の不安を確認しながら説明することが、休職制度の円滑な運用につながります。
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まとめ

休職開始時には、休職通知書、休職制度の案内書、連絡方法の確認書、診断書提出の案内、傷病手当金の申請書類、復職手続きの案内などを本人へ渡します。
書面には、休職開始日、休職期間、休職中の処遇、会社の連絡窓口、診断書提出期限、復職手続きを分かりやすく記載することが重要です。
詳細な病名や治療内容、過度な報告義務、退職を前提とする表現は避け、本人が安心して療養し、次に必要な手続きを理解できる内容を目指しましょう。
この記事の執筆者
Dr.Y(精神科医・産業医)
国立大学医学部を卒業後、都内の基幹病院で初期研修を修了。
その後、首都圏の急性期精神科病院に勤務し、
統合失調症、双極性障害、うつ病、依存症、認知症など
幅広い精神疾患の診療に従事。
現在は複数企業の選任産業医として、
復職支援、メンタルヘルス不調者対応、労務トラブル予防、
組織改善支援を行っている。
※本記事は精神科医・産業医としての専門的知見に基づき執筆しています。 個人が特定されないよう配慮し、プライバシー保護を最優先としています。
企業のメンタルヘルス対応で、判断に迷ったら
本記事は一般的な考え方をまとめたものです。 休職・復職対応、産業医面談、職場配慮の判断は、 企業の状況や従業員の状態によって異なります。
社内だけで判断が難しい場合は、 精神科専門の産業医に相談することで、 リスクを抑えた対応が可能になるケースもあります。
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