再休職と上司の関わり方|復職後に管理職が注意したいポイント

休職していた社員が復職した後、安定して勤務を続けられるかどうかには、業務量や勤務時間だけでなく、直属の上司との関わり方も影響します。上司が心配するあまり仕事を与えなくなったり、反対に「復職したのだから通常どおり働ける」と考えて急速に業務を戻したりすると、本人にとって新たな負担になることがあります。また、本人自身が「もう迷惑をかけられない」と不調を言い出せないケースもあります。本記事では、再休職を防ぐという観点から、復職後に上司がどのように関わればよいのかを産業保健の視点から解説します。
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上司だけで再休職を防ぐことはできない

まず重要なのは、再休職を防ぐ責任を直属の上司だけに負わせないことです。再休職には疾患の経過、治療状況、生活リズム、業務負荷、職場環境など複数の要因が関係します。
上司は日常の勤務状況を確認する重要な立場ですが、人事や産業医などと役割を分担して対応することが大切です。
復職直後から以前と同じ成果を求めない
復職可能と判断されたことは、必ずしも休職前と同じ業務負荷で働けることを意味しません。復職直後は、通勤して一定時間職場で過ごすだけでも疲労が生じる場合があります。
まずは安定して出勤できることを優先し、業務量や責任を段階的に戻していくことが重要です。
「大丈夫?」だけで終わらせない

上司が本人へ「体調は大丈夫?」と聞いても、多くの場合は「大丈夫です」と返ってきます。特に一度休職した社員は、周囲への遠慮から不調を言いにくいことがあります。
「最近、仕事が終わったときの疲れはどうですか」「今の仕事量は続けられそうですか」など、具体的に確認すると状況を把握しやすくなります。
毎日の体調確認をやりすぎない
本人を心配するあまり、毎朝細かく症状を確認すると、本人が監視されているように感じることがあります。上司は医療者ではないため、症状を詳細に評価する必要はありません。
日常的には勤務状況や業務上の困りごとを確認し、医学的な評価が必要な場合には産業医などへつなぐ役割が適切です。
仕事を与えなさすぎることにも注意する

再休職を心配して、復職者へほとんど仕事を任せないケースがあります。しかし、本人が「自分は必要とされていない」「周囲から外されている」と感じれば、別の心理的負担になることがあります。
負荷を抑えながらも、本人が職場で一定の役割を持てるように業務を設計することが重要です。
本人の頑張りすぎを止める
復職者自身が「休んだ分を取り戻したい」と考え、積極的に仕事を引き受けることがあります。上司から見ると意欲が戻ったように見えますが、急激な業務負荷の増加につながる場合があります。
復職初期は本人の希望だけで仕事量を増やさず、あらかじめ決めた復職計画に沿って段階的に調整することが望まれます。
残業制限を実際に守れるようにする
産業医から残業制限の意見が出ていても、本人が自主的に残って仕事をしているケースがあります。また、業務量が多すぎれば、本人が定時で帰りたくても帰れません。
上司は残業を禁止すると伝えるだけでなく、定時内で終えられる業務量になっているかも確認する必要があります。
周囲と比較しない

「他の社員はもっと忙しい」「以前はこれくらいできていた」といった比較は、復職者に焦りを生じさせることがあります。復職後は現在の状態を基準として、勤務を安定して継続できているかを確認します。
休職理由を詳しく聞きすぎない
直属の上司が治療内容や病状を詳しく把握する必要はありません。健康情報はプライバシー性が高いため、上司が確認する内容は業務管理に必要な範囲を基本とします。
具体的な医学的情報が必要な場合には、人事や産業医を通じて確認する方が適切です。
本人との距離を取りすぎない
「何を言えば体調を崩すか分からない」と考え、復職者との会話を避ける管理職もいます。しかし、上司とのコミュニケーションが減りすぎると、本人が孤立し、不調があっても相談できなくなる可能性があります。
特別扱いしすぎず、通常の業務上のコミュニケーションを維持することが大切です。
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小さな勤怠の変化に気付く

遅刻が増えた、朝の出勤がぎりぎりになった、早退が増えたなど、復職後の小さな変化は体調悪化のサインとなる場合があります。
一度の遅刻だけで問題視する必要はありませんが、変化が続く場合には早めに本人へ状況を確認します。
仕事の質や様子の変化も確認する
これまで問題なくできていた作業でミスが増える、判断に時間がかかる、相談が急に増えるといった変化がみられることがあります。こうした変化だけで病状悪化と判断することはできませんが、業務負荷を見直すきっかけにはなります。
不調があれば早めに人事や産業医へつなぐ

上司自身が「勤務を続けさせてよいか」を医学的に判断する必要はありません。睡眠の悪化や欠勤の増加などがみられ、勤務継続に不安がある場合には、人事や産業医へ相談します。
状態が大きく悪化してからではなく、少し気になる段階で相談できる体制を作っておくことが重要です。
就業上の配慮を上司にも具体的に伝える
「無理をさせないでください」という情報だけでは、管理職は具体的にどう対応すればよいか分かりません。残業、出張、担当業務、勤務時間など、必要な就業上の配慮を可能な範囲で具体化することが重要です。
その際、本人の病名や詳細な治療内容まで共有する必要はありません。
上司自身の負担にも配慮する
復職者への対応が長期間続くと、直属の上司が「どこまで配慮すればよいのか分からない」と疲弊することがあります。特に、通常のマネジメント業務と健康管理上の対応の境界が曖昧になると負担が大きくなります。
会社として相談窓口を明確にし、管理職が一人で抱え込まない仕組みを作ることも重要です。
これまでの産業医経験を踏まえて

これまで産業医として復職後の面談や企業からの相談に関わってきましたが、上司の関わり方では「配慮しすぎ」と「通常勤務へ戻しすぎ」の両方が問題になることがあります。本人を心配してほとんど仕事を任せなくなり、本人が職場での居場所を失ったように感じていたケースもあれば、復職後に勤務できていることを見て、数週間で休職前と同程度まで業務量が戻っていたケースもあります。また、上司から見ると問題なく勤務しているようでも、面談で詳しく確認すると、本人が帰宅後や休日をほぼ休養だけに使っていたこともあります。上司が病状を判断する必要はありません。日々の仕事の中で「以前と何か違う」という変化を捉え、必要なときに人事や産業医へつなげられることが、実務上は非常に重要だと感じています。
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まとめ

再休職を防ぐための上司の役割は、本人の病状を管理することではありません。復職後の業務量を適切に調整し、勤務状況の変化に気付き、本人が相談しやすい環境を作ることが重要です。また、上司だけで抱え込まず、人事や産業医と役割を分担する必要があります。復職者を過度に特別扱いするのでも、すぐに通常勤務へ戻すのでもなく、状態を確認しながら段階的に仕事を戻していくことが、安定した就業継続につながります。
この記事の執筆者
Dr.Y(精神科医・産業医)
国立大学医学部を卒業後、都内の基幹病院で初期研修を修了。
その後、首都圏の急性期精神科病院に勤務し、
統合失調症、双極性障害、うつ病、依存症、認知症など
幅広い精神疾患の診療に従事。
現在は複数企業の選任産業医として、
復職支援、メンタルヘルス不調者対応、労務トラブル予防、
組織改善支援を行っている。
※本記事は精神科医・産業医としての専門的知見に基づき執筆しています。 個人が特定されないよう配慮し、プライバシー保護を最優先としています。
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本記事は一般的な考え方をまとめたものです。 休職・復職対応、産業医面談、職場配慮の判断は、 企業の状況や従業員の状態によって異なります。
社内だけで判断が難しい場合は、 精神科専門の産業医に相談することで、 リスクを抑えた対応が可能になるケースもあります。
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