復職後の残業制限とは?再休職を防ぐための考え方

休職していた社員が職場へ復帰する際、就業上の配慮として検討されることが多いのが「残業制限」です。復職可能と判断された社員であっても、復職直後から休職前と同じ勤務時間や業務量に戻すと、疲労が蓄積し、再び体調を崩す可能性があります。特にメンタルヘルス不調からの復職では、仕事そのものに加えて通勤や職場でのコミュニケーションも負担になります。一方で、残業制限を設けるだけで復職支援が十分になるわけではありません。本記事では、復職後の残業制限について、企業が押さえておきたい実務上のポイントを解説します。
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復職後に残業制限を行う目的
復職後の残業制限は、本人を特別扱いするためのものではなく、勤務負荷を一定範囲に抑えながら安定した就業を確認するために行います。決まった時間に退勤することで、睡眠や食事などの生活リズムを整えやすくなり、復職直後の疲労蓄積を防ぎやすくなります。
復職可能でも残業可能とは限らない

「復職可能」という判断と、「残業を含めて通常通り働ける」という判断は分けて考える必要があります。定時勤務であれば安定して働けても、勤務時間が延びることで急激に疲労するケースがあります。復職時には、通常勤務の可否だけでなく残業への耐性も個別に検討することが重要です。
復職直後は残業なしから始めることもある
本人の状態によっては、復職後の一定期間を原則として残業なしとする方法があります。まず定時勤務を安定して継続できることを確認し、その後に状態を評価しながら残業制限を緩和していくことで、段階的な職場復帰につなげやすくなります。
残業時間だけでなく業務量も調整する

残業を禁止しても、従来と同じ仕事量を定時までに終わらせるよう求めれば、勤務時間中の負担が高くなる可能性があります。残業制限を行う場合には、担当業務や件数、納期、責任範囲なども合わせて調整することが大切です。
持ち帰り仕事を発生させない
会社では定時退勤していても、自宅へ仕事を持ち帰っていれば実質的な負担軽減にはなりません。メールやチャットへの時間外対応を本人が続けてしまうこともあります。残業制限中は、時間外に業務を行わないことまで含めて職場で認識を合わせておく必要があります。
本人任せの残業管理にしない

「疲れたら帰ってください」「無理なら残業しなくていいです」という対応では、本人が周囲へ遠慮して残ってしまう場合があります。復職直後は本人の自己判断だけに任せず、上司が退勤時間や業務量を確認する仕組みを作ることが重要です。
上司へ残業制限を明確に共有する
人事や産業医が残業制限を決めても、直属の上司が内容を把握していなければ実際の職場では機能しません。「当面残業なし」「月○時間以内」など、必要な就業上の制限を具体的に共有し、業務指示を行う管理職にも理解してもらう必要があります。
本人が自主的に残業したがる場合にも注意する
復職した社員が「遅れを取り戻したい」「周囲に迷惑をかけたくない」と考え、自ら残業を希望することがあります。しかし、復職直後の頑張りすぎが後の体調悪化につながることもあります。本人の意欲を尊重しつつ、決められた制限を守ることが大切です。
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産業医の意見を活用する
残業制限が必要か、どの程度の期間が適切か判断に迷う場合には、産業医の意見を活用します。本人の症状だけでなく、勤務時間、仕事内容、通勤時間、復職後の疲労なども確認しながら、就業上必要となる配慮を検討できます。
残業制限には見直し時期を設ける

残業制限を一度設定したまま長期間固定するのではなく、一定期間ごとに見直すことが重要です。例えば復職後数週間から1か月程度の勤務状況を確認し、安定していれば制限の緩和を検討します。反対に疲労や症状の悪化がみられる場合には、現在の業務負荷そのものを再検討します。
残業制限の解除を急がない
定時勤務が数日問題なくできたからといって、すぐに残業を再開する必要はありません。勤務時間が延びることで睡眠時間が短くなったり、翌日の疲労が強くなったりすることがあります。一定期間の安定を確認してから段階的に解除することが望まれます。
残業制限の解除後も経過を確認する

制限を解除した後も、それまでと同じ状態が続くとは限りません。残業が増え始めたことで疲労が蓄積していないか、睡眠や勤怠に変化がないかを確認します。解除後も一定期間は人事や上司、必要に応じて産業医が経過を見ることが重要です。
残業だけを原因と考えない
復職後に体調が不安定になった場合、残業時間だけを確認しても原因が見つからないことがあります。定時勤務でも業務密度が高い、対人ストレスが強い、担当業務の責任が重いなど、別の負担要因が隠れていることがあります。労働時間と仕事内容の両方を見る視点が必要です。
これまでの産業医経験を踏まえて

これまで産業医として復職後の就業支援に関わってきましたが、残業制限は比較的分かりやすい配慮である一方、「残業をゼロにしているから大丈夫」と考えてしまうことには注意が必要だと感じています。実際には、定時内の業務量が多すぎたり、復職した本人が休職前の遅れを取り戻そうとして休憩を取らずに働いたりするケースもあります。一方で、復職直後は残業を明確に制限し、業務量も調整したうえで、本人・上司・産業医が数週間ごとに状態を確認しながら段階的に制限を解除したケースでは、安定した勤務につながることが多くありました。残業制限そのものを目的にするのではなく、本人が無理なく通常勤務へ戻るための一時的な支援として活用することが重要だと感じています。
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まとめ

復職後の残業制限は、復職直後の疲労を抑え、生活リズムを維持しながら安定した勤務へ戻るための重要な配慮の一つです。ただし、残業時間だけを制限するのではなく、業務量や責任範囲、時間外の連絡なども合わせて確認する必要があります。人事・管理職・産業医が連携し、一定期間ごとに状態を評価しながら段階的に制限を見直すことが、再休職を防ぎ、安定した就業継続につながります。
この記事の執筆者
Dr.Y(精神科医・産業医)
国立大学医学部を卒業後、都内の基幹病院で初期研修を修了。
その後、首都圏の急性期精神科病院に勤務し、
統合失調症、双極性障害、うつ病、依存症、認知症など
幅広い精神疾患の診療に従事。
現在は複数企業の選任産業医として、
復職支援、メンタルヘルス不調者対応、労務トラブル予防、
組織改善支援を行っている。
※本記事は精神科医・産業医としての専門的知見に基づき執筆しています。 個人が特定されないよう配慮し、プライバシー保護を最優先としています。
企業のメンタルヘルス対応で、判断に迷ったら
本記事は一般的な考え方をまとめたものです。 休職・復職対応、産業医面談、職場配慮の判断は、 企業の状況や従業員の状態によって異なります。
社内だけで判断が難しい場合は、 精神科専門の産業医に相談することで、 リスクを抑えた対応が可能になるケースもあります。
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