復職後の勤務時間はどう決める?企業が考えるべき設定方法

休職していた社員が職場へ戻る際、復職後の勤務時間をどのように設定するかは重要なポイントです。復職可能と判断されたとしても、休職前と同じ時間働ける状態まで完全に回復しているとは限りません。特に長期間休職していた場合には、通勤や職場で過ごすこと自体が大きな負担になるケースもあります。一方で、勤務時間を必要以上に短縮した状態を長く続けることも、通常勤務への移行を難しくすることがあります。本人の健康状態や仕事内容を踏まえながら、段階的に勤務時間を調整することが重要です。本記事では、復職後の勤務時間について企業が押さえておきたいポイントを解説します。
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復職可能とフルタイム勤務可能は同じではない
主治医から復職可能と判断されても、すぐにフルタイム勤務が可能とは限りません。治療上は職場復帰できる状態でも、長時間の集中や通勤を含めた勤務生活にはまだ慣れていない場合があります。復職判断と勤務時間の設定は分けて考えることが大切です。
休職前の勤務時間だけを基準にしない

休職前に1日8時間勤務をしていたからといって、復職初日から同じ時間で働く必要があるとは限りません。現在の生活リズムや日中の活動量、疲労の程度などを確認し、今の状態に合った勤務時間を検討します。
短時間勤務から始める方法もある
本人の状態によっては、復職直後を短時間勤務とし、徐々に勤務時間を延ばしていく方法があります。例えば一定期間は通常より早く退勤し、その後の勤務状況を確認しながら通常勤務へ近づけます。ただし、短時間勤務が必要かどうかは個別に判断することが重要です。
始業時間を遅らせる場合は慎重に考える
朝の起床が難しいことを理由に始業時間を遅らせる対応もありますが、生活リズムそのものが十分に整っていない場合には注意が必要です。通常勤務へ戻ることを目標とするのであれば、可能な範囲で通常の始業時間に合わせ、終業時間を早める方法が適していることもあります。
通勤時間も勤務負荷として考える

勤務時間だけでなく、通勤に必要な時間も負担になります。片道1時間以上かかる社員では、6時間勤務でも実際には長時間外出することになります。復職後の勤務時間を考える際には、通勤を含めた一日の活動量を見ることが重要です。
勤務時間と業務量を同時に調整する
勤務時間を6時間へ短縮しても、8時間分の仕事を求めれば負担軽減にはなりません。担当件数や締め切り、会議数なども見直し、勤務時間に見合った仕事量に調整する必要があります。
残業は別に考える

所定労働時間を問題なく勤務できるようになっても、すぐに残業まで可能とは限りません。復職直後は定時勤務を安定して継続できることを確認し、その後に残業制限を緩和するという段階的な考え方が有効です。
勤務時間中の疲労にも注目する
遅刻や欠勤がなくても、午後になると集中力が大きく低下したり、帰宅後に何もできないほど疲れていたりする場合があります。単に「勤務できた時間」だけではなく、勤務後まで含めた疲労の程度を確認することが大切です。
本人の希望だけで勤務時間を決めない

本人が「最初からフルタイムで大丈夫です」と希望しても、職場への申し訳なさや焦りから無理をしている場合があります。反対に、必要以上に短時間勤務を希望するケースもあります。本人の希望を聞きつつ、主治医や産業医の意見、実際の勤務能力を踏まえて判断します。
産業医の意見を勤務時間へ反映する
勤務時間の設定に迷う場合には、産業医面談を活用します。産業医は症状だけでなく、生活リズム、通勤時間、仕事内容、復職後に想定される負担などを確認し、短時間勤務や残業制限について就業上の意見を提示できます。
勤務時間には見直し時期を設定する

短時間勤務を設定する場合には、「当面6時間勤務」とするだけではなく、いつ再評価するかも決めておきます。数週間後などに本人の勤務状況や疲労を確認し、安定していれば勤務時間を延ばすなど、次の段階へ進む基準を整理しておくことが重要です。
通常勤務へ段階的に戻していく
勤務時間の配慮は固定するのではなく、本人の回復状況に合わせて段階的に解除していきます。ただし、勤務時間を延長した直後は疲労が増えることもあるため、変更後の状態を確認しながら無理のないペースで進めます。
勤怠の変化を早めに確認する

復職後に遅刻や早退、欠勤が増えてきた場合には、勤務時間や業務負荷が現在の状態に合っていない可能性があります。本人が体調悪化を自覚する前に勤怠へ変化が現れることもあるため、上司や人事が早期に気付ける体制を作ることが大切です。
勤務時間を短くすること自体を目的にしない
復職支援の目的は、短時間勤務を続けることではなく、本人が安定して通常勤務を継続できる状態へ戻ることです。勤務時間の短縮はそのための一つの手段であり、必要性が低下した段階で適切に見直していくことが重要です。
これまでの産業医経験を踏まえて

これまで産業医として復職支援に関わってきましたが、復職後の勤務時間については「何時間なら働けるか」だけを見るのでは不十分だと感じています。例えば6時間勤務を問題なく終えていても、帰宅すると強い疲労で動けず、翌朝の起床が難しくなっているケースもあります。反対に、短時間勤務を長く続けているものの、実際には通常勤務へ戻せる程度まで回復しているケースもあります。そのため、勤務時間だけではなく、通勤、業務中の集中力、帰宅後の疲労、翌日の状態まで確認しながら調整することが重要です。実際に、数週間ごとに本人・会社・産業医で状態を確認し、勤務時間と業務量を少しずつ増やしたケースでは、比較的安定して通常勤務へ移行できることが多くありました。
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まとめ

復職後の勤務時間は、休職前の勤務形態へ機械的に戻すのではなく、本人の回復状況や生活リズム、通勤時間、仕事内容などを踏まえて設定することが重要です。必要に応じて短時間勤務から開始し、業務量や残業も合わせて調整します。また、一定期間ごとに勤務状況を評価しながら段階的に通常勤務へ戻すことが、安定した就業継続と再休職の予防につながります。
この記事の執筆者
Dr.Y(精神科医・産業医)
国立大学医学部を卒業後、都内の基幹病院で初期研修を修了。
その後、首都圏の急性期精神科病院に勤務し、
統合失調症、双極性障害、うつ病、依存症、認知症など
幅広い精神疾患の診療に従事。
現在は複数企業の選任産業医として、
復職支援、メンタルヘルス不調者対応、労務トラブル予防、
組織改善支援を行っている。
※本記事は精神科医・産業医としての専門的知見に基づき執筆しています。 個人が特定されないよう配慮し、プライバシー保護を最優先としています。
企業のメンタルヘルス対応で、判断に迷ったら
本記事は一般的な考え方をまとめたものです。 休職・復職対応、産業医面談、職場配慮の判断は、 企業の状況や従業員の状態によって異なります。
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