復職後の異動はどう考える?配置転換の判断基準

休職していた社員が職場復帰する際、「元の部署へ戻すべきか、それとも異動させるべきか」で判断に迷う企業は少なくありません。特に、休職前の仕事内容や人間関係、長時間労働などが体調悪化に関係していた場合、元の部署へ戻すことが再発リスクにつながる可能性があります。一方で、復職と同時の異動は、新しい仕事内容や人間関係への適応という別の負担を生じさせます。そのため、「異動すれば安心」と単純に考えるのではなく、本人の健康状態、休職に至った経緯、業務内容、職場環境などを整理して判断することが重要です。本記事では、復職後の異動について企業が押さえておきたい実務上のポイントを解説します。
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復職後は必ず異動が必要なわけではない

休職した社員だからといって、復職時に必ず異動させる必要があるわけではありません。元の部署で安定して働ける環境があり、仕事内容にも大きな問題がなければ、慣れた職場へ戻る方が本人の負担を抑えられることがあります。まずは元職場で復職できるかを検討し、必要性がある場合に異動を考えるという順序が現実的です。
休職に至った背景を整理する
異動を検討する際には、休職に至った背景を整理します。業務量、残業、仕事内容、人間関係、本人の体調など、複数の要因が重なっているケースも少なくありません。「職場が原因だった」と一括りにせず、どの要因を調整する必要があるのかを具体的に考えることが重要です。
人間関係が原因の場合は慎重に判断する

上司や同僚との関係が体調悪化に影響していた場合、元の職場へ戻ることに本人が強い不安を感じることがあります。ただし、本人が異動を希望したという理由だけで直ちに配置転換を決定するのではなく、人事部門で状況を確認し、必要に応じて産業医の意見も踏まえて判断します。
仕事内容が負担だった場合も異動だけが解決策ではない
休職前の仕事内容が負担になっていた場合でも、異動以外の対応が可能なことがあります。担当業務の変更、業務量の軽減、残業制限、出張や夜勤の制限などによって、元の部署で勤務を継続できるケースもあります。異動の前に、現在の部署で可能な業務配慮を検討することも大切です。
復職と同時の異動には負担もある

復職すること自体が、休職していた社員にとって大きな環境変化です。そこへ異動が重なると、新しい仕事内容を覚え、新しい上司や同僚との関係を作る必要があります。本人を守る目的で行った異動が、かえって大きな負担になることもあるため注意が必要です。
本人の希望だけで決めない
「元の部署には戻りたくない」「別の部署なら働ける」と本人が希望するケースもあります。本人の意向は重要な情報ですが、異動の最終判断には健康状態だけでなく、業務適性や会社の人員配置なども関係します。本人の希望を確認しつつ、企業として総合的に検討する必要があります。
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異動先の業務負荷を確認する

異動先を決める場合には、単に空いている部署へ配置するのではなく、具体的な仕事内容を確認します。新しい部署の方が残業が多かったり、対人対応や出張が多かったりすれば、結果的に負担が増える可能性があります。異動先で求められる能力と本人の現在の状態を照らし合わせることが重要です。
「負担の少ない部署」という曖昧な判断を避ける
企業側が「こちらの部署の方が楽だろう」と考えていても、本人にとって負担が少ないとは限りません。業務量だけでなく、集中力、対人関係、責任範囲、勤務時間、出張の有無など、負荷を具体的に分けて検討する必要があります。
異動によるキャリアへの影響にも配慮する

復職後の異動が本人にとって「休職したことへのペナルティ」と受け止められることがあります。特に、本人への説明が十分でないまま仕事内容や役割が大きく変わると、不信感につながる可能性があります。異動の目的や必要性について、可能な範囲で丁寧に説明することが大切です。
産業医が異動先を決めるわけではない
復職後の異動を検討する際、産業医の意見は重要な判断材料になります。ただし、産業医が人事配置そのものを決定するわけではありません。産業医は医学的な観点から、避けた方がよい勤務負荷や必要な就業上の配慮について意見を示し、それを踏まえて企業が配置を判断するという役割分担が基本になります。
異動先の上司への情報共有を行う
異動が決まった場合には、受け入れる上司へ必要な情報を共有します。ただし、病名や治療内容などの健康情報を必要以上に伝えることは避けます。「当面残業を制限する」「宿泊出張は控える」など、業務管理に必要な範囲で配慮事項を共有することが重要です。
異動後のフォローを設定する

異動して復職した時点で支援を終了するのではなく、その後の勤務状況を確認します。新しい仕事内容や人間関係へ適応できているか、疲労が蓄積していないかなどを確認し、必要に応じて業務量や配慮内容を見直します。
異動後の不調をすべて配置の問題と考えない
異動後に体調が不安定になった場合でも、必ずしも異動そのものが原因とは限りません。勤務時間の増加、通勤負担、治療状況、業務量など複数の要因が関係することがあります。原因を一つに決めつけず、本人への面談などを通じて状況を整理することが必要です。
異動を固定的に考えない
復職時の異動が永続的なものでなければならないとは限りません。一定期間は負担を調整した部署で勤務し、状態が十分に安定した段階で本人の希望や会社の状況を踏まえて再度配置を検討する方法もあります。復職支援では、回復状況に合わせて柔軟に見直す視点が大切です。
これまでの産業医経験を踏まえて

これまで産業医として復職支援に関わってきましたが、復職後の異動については「元の部署が不安だから異動すれば解決する」と単純に考えないことが重要だと感じています。実際には、元の部署でも業務量や残業、担当業務を調整することで安定して復職できるケースがあります。一方で、休職前の職場環境が明らかな負担となっており、同じ環境へ戻ることで症状が再燃しやすいと考えられる場合には、異動を含めた検討が必要になることもあります。また、新しい部署への異動によって仕事内容や人間関係が一度に変化し、本人が予想以上に疲れてしまうケースもあります。そのため、本人の希望だけでなく、休職に至った経緯、現在の勤務能力、元部署と異動先それぞれの業務負荷を具体的に整理したうえで判断することが重要です。
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まとめ

復職後の異動は、休職した社員に一律に行うものではありません。元の部署で安定して勤務できる可能性、休職に至った背景、異動先の業務負荷、新しい環境へ適応する負担などを総合的に検討する必要があります。異動を行う場合にも、産業医の医学的意見を参考にしながら企業が配置を判断し、必要な就業上の配慮と異動後のフォローを行うことが重要です。復職後の異動は「どこへ移すか」だけではなく、「どの環境であれば安定して働き続けられるか」という視点から考えることが大切です。
この記事の執筆者
Dr.Y(精神科医・産業医)
国立大学医学部を卒業後、都内の基幹病院で初期研修を修了。
その後、首都圏の急性期精神科病院に勤務し、
統合失調症、双極性障害、うつ病、依存症、認知症など
幅広い精神疾患の診療に従事。
現在は複数企業の選任産業医として、
復職支援、メンタルヘルス不調者対応、労務トラブル予防、
組織改善支援を行っている。
※本記事は精神科医・産業医としての専門的知見に基づき執筆しています。 個人が特定されないよう配慮し、プライバシー保護を最優先としています。
企業のメンタルヘルス対応で、判断に迷ったら
本記事は一般的な考え方をまとめたものです。 休職・復職対応、産業医面談、職場配慮の判断は、 企業の状況や従業員の状態によって異なります。
社内だけで判断が難しい場合は、 精神科専門の産業医に相談することで、 リスクを抑えた対応が可能になるケースもあります。
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