メンタル不調による生産性低下|企業が見落としやすい仕事への影響

メンタル不調による企業への影響は、休職や離職だけではありません。実際には出勤を続けていても、集中力や判断力が低下し、以前と同じように仕事を進められなくなることがあります。いわゆるプレゼンティーズムの問題です。一方で、仕事の能率が落ちた社員をすぐにメンタル不調と判断することも適切ではありません。本記事では、メンタル不調による生産性低下について、企業が確認したいポイントを産業保健の実務を踏まえて解説します。
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出勤していても生産性が低下することがある

メンタル不調というと、欠勤や休職が目立ちます。しかし、実際には毎日出勤しているものの、本来のパフォーマンスを発揮できていない状態もあります。
本人も「仕事には来ているから大丈夫」と考えていることがあり、欠勤よりも問題が見えにくい点が特徴です。
集中力の低下として現れることがある
以前なら短時間で終わっていた仕事に時間がかかる、資料を読んでも内容が頭に入らない、何度も同じ部分を確認するといった変化がみられることがあります。
単純な能力の問題と考える前に、睡眠や体調などに変化がないかを確認することも重要です。
ミスが増える場合もある

集中力や注意力が低下すると、入力ミスや確認漏れなどが増える場合があります。本人がミスを取り戻そうとして長時間働き、さらに疲労することもあります。
特に運転や機械操作など安全に関わる業務では、健康状態が業務へ与える影響を慎重に確認する必要があります。
判断や意思決定に時間がかかることもある
メンタル不調では、物事を決めること自体に時間がかかる場合があります。管理職であれば、部下への指示や承認業務が滞り、チーム全体の仕事へ影響することもあります。
本人だけの仕事量ではなく、周囲への影響まで含めて見ることが重要です。
残業時間が長いほど成果が高いとは限らない

仕事が進まないために残業が増えているケースもあります。そのため、長時間働いていることを高い生産性と同じように考えることはできません。
残業時間が急に増えた社員では、業務量の増加だけでなく、以前より仕事に時間がかかっていないかも確認します。
プレゼンティーズムは数字だけでは把握しにくい
欠勤日数や休職者数は会社として把握しやすい一方、出勤している社員の生産性低下を正確に金額へ換算することは簡単ではありません。
一律の損失額を当てはめるより、勤怠、仕事の進捗、ミス、本人や上司からの情報などを組み合わせて状況を確認する方が実務的です。
本人を責めると相談が遅れることがある

仕事の能率が低下した社員に対して、「やる気がない」「最近仕事が遅い」とだけ指摘すると、本人がさらに追い込まれることがあります。
もちろん必要な業務指導は行いますが、以前との変化が大きい場合には、仕事量や健康状態について確認する視点も必要です。
早期の業務調整で勤務を継続できる場合もある
状態によっては、一定期間残業を避ける、担当業務を減らす、出張を調整するといった対応によって勤務を継続できる場合があります。
ただし、勤務時間だけを短くして仕事量を変えなければ、限られた時間へ業務を詰め込むことになります。就業配慮では実際の仕事量まで確認することが重要です。
無理な勤務継続が長期休職につながることもある

生産性を維持するために無理に勤務を続けさせることが、必ずしも企業にとって良い結果になるとは限りません。
健康状態によっては、一度仕事から離れて治療や休養に専念した方がよい場合もあります。勤務継続と休職のどちらが適切かは、主治医や産業医の意見も踏まえて判断します。
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部署全体の生産性低下にも目を向ける

複数の社員で疲労や能率低下がみられる場合には、個人だけでなく職場側の問題も確認します。
慢性的な人員不足、長時間労働、頻繁な組織変更、特定社員への業務集中などがあれば、個別面談だけでは十分な改善につながらないことがあります。
管理職が変化を把握できる体制を作る
日常的な仕事の変化に最も気付きやすいのは直属上司であることが少なくありません。仕事の遅れやミスが続いている場合には、単に評価するだけでなく、最近何か変化がないか確認します。
必要であれば、人事や産業医へ早めにつなぐことが重要です。
産業医面談で健康状態と仕事を整理する

産業医面談では、睡眠や気分などの健康状態に加えて、残業時間、仕事内容、出張、夜勤など実際の勤務状況を確認します。
そのうえで、医療機関への受診が必要か、勤務を継続する場合にどのような就業上の配慮が必要かを検討します。
これまでの産業医経験を踏まえて

これまで産業医面談を行っていると、欠勤はしていないものの「以前なら1時間で終わった仕事に半日かかる」「文章を何度読んでも頭に入らない」と話す社員に出会うことがあります。周囲からは勤務できているように見えるため、本人もかなり状態が悪化するまで働き続けてしまうことがあります。一方、比較的早い段階で面談につながり、治療と合わせて残業や業務量を調整することで勤務を継続できるケースもあります。生産性低下を本人の努力不足だけで捉えず、以前との変化や健康状態を確認することが重要だと考えています。
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まとめ

メンタル不調による企業への影響は、欠勤や休職だけではなく、出勤中の集中力低下、ミス、判断の遅れなどとして現れることがあります。こうした生産性低下は数字だけでは把握しにくいため、勤怠や仕事の進捗、本人の状態などを合わせて確認することが重要です。状態が悪化する前に上司、人事、産業医へ相談でき、必要な治療や業務調整につなげられる体制を整えることが、社員の健康と安定した就業の両方につながります。
この記事の執筆者
Dr.Y(精神科医・産業医)
国立大学医学部を卒業後、都内の基幹病院で初期研修を修了。
その後、首都圏の急性期精神科病院に勤務し、
統合失調症、双極性障害、うつ病、依存症、認知症など
幅広い精神疾患の診療に従事。
現在は複数企業の選任産業医として、
復職支援、メンタルヘルス不調者対応、労務トラブル予防、
組織改善支援を行っている。
※本記事は精神科医・産業医としての専門的知見に基づき執筆しています。 個人が特定されないよう配慮し、プライバシー保護を最優先としています。
企業のメンタルヘルス対応で、判断に迷ったら
本記事は一般的な考え方をまとめたものです。 休職・復職対応、産業医面談、職場配慮の判断は、 企業の状況や従業員の状態によって異なります。
社内だけで判断が難しい場合は、 精神科専門の産業医に相談することで、 リスクを抑えた対応が可能になるケースもあります。
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