メンタル不調による組織崩壊|不調者の増加を個人の問題で終わらせない

メンタル不調によって一人の社員が休職しただけで、直ちに組織が崩壊するわけではありません。しかし、人員に余裕のない職場で休職や離職が続くと、残された社員へ仕事が集中し、その社員まで疲弊するという悪循環が生じることがあります。特に、管理職や一部のキーパーソンへの依存度が高い組織では、一人の離脱が職場全体へ与える影響も大きくなります。本記事では、メンタル不調をきっかけに組織が不安定になる過程と、企業が確認したいポイントを産業保健の実務を踏まえて解説します。
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一人のメンタル不調が組織崩壊を起こすわけではない

まず重要なのは、メンタル不調者が出たこと自体を組織崩壊と結びつけないことです。どのような職場でも、社員が体調を崩す可能性はあります。
問題になるのは、一人が離脱した際に仕事を吸収できる余力がなく、周囲への負担が連鎖的に増えていく状態です。
休職者の仕事が残された社員へ集中する
休職者が出ても、その社員が担当していた仕事がなくなるとは限りません。多くの場合、同僚や管理職が仕事を引き継ぎます。
短期間であれば対応できても、欠員補充がないまま数か月続けば、残された社員の残業や業務密度が高くなります。
仕事ができる社員ほど負担が増えやすい

人手不足になると、重要な仕事は経験豊富な社員や仕事の速い社員へ集まりやすくなります。本人も責任感から仕事を引き受け続けることがあります。
表面上は職場が回っていても、特定の社員の負担によって維持されている状態には注意が必要です。
二人目の休職・離職から急速に厳しくなることがある
一人の欠員であれば周囲がカバーできていた職場でも、さらに別の社員が休職・離職すると状況が急に変わることがあります。
残された社員へ仕事が再配分され、残業が増え、休暇を取りにくくなることで、さらに不調者が生じる悪循環につながる可能性があります。
管理職が疲弊するとチーム全体へ影響する

欠員が出た際には、管理職自身が実務を引き受けるケースも少なくありません。それに加えて、本人との面談、人事との調整、採用や引き継ぎなども必要になります。
管理職に余裕がなくなると、他の社員の変化を把握する時間も減り、問題への対応が遅れやすくなります。
離職によってさらに人が辞めることもある
同僚の退職によって「この職場は大丈夫なのか」と不安を感じる社員もいます。さらに、退職者の仕事まで引き継ぐことになれば、残された社員自身が転職を考えるきっかけになることもあります。
離職者数だけでなく、離職後に職場の業務量がどのように変化したかを見ることが重要です。
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属人化している組織ほど影響が大きい

「この仕事はこの人しか分からない」という状態では、その社員が休職した際に業務そのものが止まる可能性があります。
メンタルヘルス対策とは別に、業務手順の共有や複数担当制などによって、特定の社員だけに依存しない体制を整えることも組織の安定につながります。
採用だけでは解決できない場合もある
人が辞めたら新しく採用すればよいと考えても、採用難の職種ではすぐに補充できないことがあります。また、新しい社員が業務を理解するまでには一定の時間が必要です。
退職者が続いている場合には、採用数だけでなく、既存社員がなぜ疲弊しているのかを確認する必要があります。
同じ部署で不調者が続く場合には職場側も確認する

一人のメンタル不調について会社側に原因があるとは限りません。しかし、同じ部署から短期間に複数の休職者や離職者が出ている場合には、共通する要因がないか確認する意味があります。
残業時間、人員配置、業務量、管理職の担当人数、組織変更などを客観的に振り返ります。
早期対応で負担の連鎖を止める
社員が完全に勤務できなくなる前に、残業制限や業務量の調整、医療機関への受診などにつなげられる場合があります。
すべての休職を防ぐことはできませんが、社員が早い段階で上司、人事、産業医へ相談できる体制を作ることで、状態の悪化を防げるケースもあります。
休職者だけでなく残された社員を見る

メンタル不調者が出ると、会社の関心は本人の治療や復職へ集中しがちです。しかし同時に、その社員の仕事を誰が担当しているのかを確認する必要があります。
残された社員の残業時間や業務量が急増していないかを確認することが、次の不調を防ぐためには重要です。
産業医には組織全体を見る役割もある
産業医は個々の社員との面談だけでなく、複数の面談や勤怠状況などから職場に共通する課題を検討することがあります。
個人の健康情報をそのまま会社へ伝えるのではなく、必要に応じて「特定部署で業務負荷が高まっている」といった組織的な視点から人事や会社側へ助言することもあります。
これまでの産業医経験を踏まえて

これまで産業医として企業に関わっていると、一人の休職者が出たことよりも、その後の業務再配分によって職場が苦しくなっているケースを経験します。特に人員に余裕がない部署では、残された社員が「自分まで休めない」と考えて無理を続けることがあります。また、管理職自身が実務を引き受け、部下の健康状態まで見る余裕を失っていることもあります。メンタル不調への対応では、休職した本人だけをフォローするのではなく、その仕事を誰が引き継ぎ、周囲の負担がどの程度増えているのかまで確認することが、組織全体を守るうえで重要だと考えています。
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まとめ

メンタル不調による組織崩壊は、一人の不調によって突然起こるというより、欠員による業務集中、残業増加、管理職の疲弊、さらなる休職・離職といった負担の連鎖によって進むことがあります。特に人員に余裕がなく、業務が属人化している職場では注意が必要です。不調者本人への対応だけでなく、残された社員の業務量や部署全体の状況を確認し、早い段階で負担の連鎖を止めることが重要です。
この記事の執筆者
Dr.Y(精神科医・産業医)
国立大学医学部を卒業後、都内の基幹病院で初期研修を修了。
その後、首都圏の急性期精神科病院に勤務し、
統合失調症、双極性障害、うつ病、依存症、認知症など
幅広い精神疾患の診療に従事。
現在は複数企業の選任産業医として、
復職支援、メンタルヘルス不調者対応、労務トラブル予防、
組織改善支援を行っている。
※本記事は精神科医・産業医としての専門的知見に基づき執筆しています。 個人が特定されないよう配慮し、プライバシー保護を最優先としています。
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本記事は一般的な考え方をまとめたものです。 休職・復職対応、産業医面談、職場配慮の判断は、 企業の状況や従業員の状態によって異なります。
社内だけで判断が難しい場合は、 精神科専門の産業医に相談することで、 リスクを抑えた対応が可能になるケースもあります。
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