休職中の無断連絡とは?

メンタルヘルス不調などで休職している社員が、会社へ何の連絡もなく診断書の提出や面談を欠席し、電話やメールにも応じなくなることがあります。企業としては「無断で連絡がない」という事実だけを見ると、休職制度を守る意思がないように感じるかもしれません。しかし、実際には症状の悪化や意欲低下、不安の強まりなどによって、会社へ連絡すること自体が大きな負担となっているケースも少なくありません。一方で、会社には休職管理を適切に行う責任があるため、本人を責めるのではなく、一定の手順に沿って冷静に対応することが重要です。
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無断連絡が起こる背景

休職中に会社へ連絡できなくなる理由はさまざまです。うつ病では意欲低下や判断力の低下から、「返信しなければ」と思っていても実際に行動へ移せないことがあります。また、会社へ迷惑をかけているという罪悪感から連絡を避けてしまう人もいます。適応障害では職場を思い出すだけで強い不安が生じ、会社からのメールを見ることすら負担になるケースもあります。無断連絡という行動だけで本人の意思や性格を判断することは適切ではありません。
休職開始時に連絡ルールを決めておく
無断連絡によるトラブルを防ぐためには、休職開始時に連絡方法を明確にしておくことが重要です。担当者、連絡手段、連絡頻度、診断書の提出期限などを事前に説明し、本人にも理解してもらいます。また、体調が悪く返信できない場合には、その旨だけでも連絡してもらえればよいことや、返信が難しい場合の相談先も共有しておくことで、心理的な負担を軽減できます。
返信がないからといって急かさない

一度返信がないだけで、何度も電話やメールを送ることは避けるべきです。本人は「早く復職するよう求められている」「責められている」と受け止め、さらに会社との連絡を避けるようになる場合があります。連絡する際には目的を明確にし、診断書の提出なのか、体調確認なのか、面談日程の調整なのかを分けて伝えることが重要です。
一定期間連絡が取れない場合の対応

数回連絡しても返信がない場合には、メールだけではなく書面による通知も検討します。また、本人が事前に同意している緊急連絡先がある場合には、家族へ安否や連絡状況を確認することもあります。ただし、本人の同意なく病状などの健康情報を詳しく伝えることは避けなければなりません。企業は連絡日時や方法、内容を記録として残しておくことも重要です。
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診断書の提出がない場合
無断連絡とともに診断書の提出も止まってしまうケースがあります。このような場合には、就業規則に基づき提出期限や必要書類について改めて通知します。診断書が提出されないからといって、直ちに懲戒処分を検討するのではなく、本人が提出できない状況なのか、意思表示として提出していないのかを整理することが必要です。
会社が避けたい対応

「返事がないなら復職する意思がないと判断します」「これ以上連絡がなければ退職です」といった威圧的な対応は避けるべきです。また、自宅への突然の訪問や繰り返しの電話も本人の負担になる可能性があります。会社は感情的にならず、就業規則に基づき、必要な手続きを丁寧に進めることが重要です。
産業医面談につなげる
本人と再び連絡が取れるようになった場合には、産業医面談を実施し、なぜ連絡ができなかったのか、現在の体調や今後の連絡方法について整理することが望まれます。連絡が途絶えた背景を理解することで、再び同じ状況になることを防ぎやすくなります。また、復職に向けた課題もあわせて確認できます。
長期間無断連絡が続く場合

長期間まったく連絡が取れず、診断書の提出もない場合には、就業規則に基づく対応を検討する必要があります。ただし、その前に会社として必要な連絡や通知を十分に行っているか、本人が病状によって対応できない状態ではないかを確認することが重要です。制度上の対応と医学的な配慮は分けて考える必要があります。
会社と本人の信頼関係を維持する

休職中の連絡は、本人を管理するためではなく、安全に療養し、適切なタイミングで復職支援を行うためのものです。会社が一方的に連絡を求めたり、本人が会社を避け続けたりすると、信頼関係が失われ、復職支援も難しくなります。双方が安心してやり取りできる方法を早い段階で決めておくことが望まれます。
これまでの産業医経験を踏まえて

これまで産業医として休職者と面談していると、「返信しなければいけないと思うほど苦しくなり、メールを見ること自体を避けてしまった」と話す社員は少なくありませんでした。一方で、会社側は「無断で連絡がない以上、復職意思がないのではないか」と受け止め、双方の認識が大きくずれているケースもありました。休職開始時から連絡方法や頻度、返信が難しい場合の対応を共有できていた企業では、大きなトラブルへ発展することは比較的少ない印象があります。無断連絡という結果だけを見るのではなく、その背景を理解しながら対応することが重要だと感じています。
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まとめ

休職中の無断連絡は、本人の病状や心理的負担が背景となっている場合も多くあります。企業は感情的に対応するのではなく、休職開始時から連絡ルールを整理し、段階的に事実確認を行うことが重要です。長期間連絡が取れない場合でも、就業規則に沿った対応と医学的な配慮を分けて考え、必要に応じて産業医や主治医とも連携しながら対応を進めることが、適切な休職管理につながります。
この記事の執筆者
Dr.Y(精神科医・産業医)
国立大学医学部を卒業後、都内の基幹病院で初期研修を修了。
その後、首都圏の急性期精神科病院に勤務し、
統合失調症、双極性障害、うつ病、依存症、認知症など
幅広い精神疾患の診療に従事。
現在は複数企業の選任産業医として、
復職支援、メンタルヘルス不調者対応、労務トラブル予防、
組織改善支援を行っている。
※本記事は精神科医・産業医としての専門的知見に基づき執筆しています。 個人が特定されないよう配慮し、プライバシー保護を最優先としています。
企業のメンタルヘルス対応で、判断に迷ったら
本記事は一般的な考え方をまとめたものです。 休職・復職対応、産業医面談、職場配慮の判断は、 企業の状況や従業員の状態によって異なります。
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