休職中の社員心理とは?企業が理解しておきたい

メンタルヘルス不調などで休職した社員は、仕事から離れることで安心する一方、さまざまな心理的変化を経験します。「ようやく休める」という気持ちから始まり、「職場へ迷惑をかけている」「このまま復職できるのだろうか」「会社から忘れられてしまうのではないか」といった不安へ変化していくことも少なくありません。企業がこうした心理を理解せずに対応すると、本人の焦りや孤立感を強め、回復や復職に影響することがあります。休職中は病気だけを見るのではなく、本人がどのような気持ちで療養しているのかを理解しながら支援することが大切です。
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休職直後は安心と不安が入り混じる

休職が決まった直後は、「これ以上無理をしなくてよい」という安心感を持つ人がいます。一方で、仕事を休むことへの罪悪感や、「本当に休んでよかったのだろうか」という迷いを抱くこともあります。責任感が強い社員ほど、自分が休んだことで職場へ迷惑をかけていると感じやすく、十分に休養できないことがあります。この時期は会社が早期復職を期待するような発言を避け、まずは療養に専念してよいことを伝えることが重要です。
会社への申し訳なさを感じやすい
休職中の社員は、「自分の仕事を誰かが代わりに担当している」「同僚へ負担をかけている」と考え、強い申し訳なさを抱えることがあります。そのため、体調が十分に改善していない段階でも、「早く戻らなければならない」と焦ってしまうケースがあります。会社としては、本人の責任感を否定する必要はありませんが、「まずは治療を優先してください」という姿勢を明確に伝え、復職を急がせるような印象を与えないことが大切です。
将来への不安が強くなる

休職期間中は、収入、職場での立場、復職後の働き方など、将来への不安が大きくなります。「元の部署へ戻れるのか」「評価は下がるのではないか」「再び同じ環境になるのではないか」と考え続けることで、不安が症状を長引かせることがあります。会社は休職制度や復職までの流れ、必要な手続きについて分かりやすく説明し、見通しを持てるよう支援することが重要です。
孤立感を抱くことがある
休職すると、毎日顔を合わせていた上司や同僚との接点が急になくなります。会社が療養への配慮として連絡を控えていても、本人は「会社から忘れられた」「もう必要とされていない」と感じることがあります。反対に、頻繁な連絡は負担になることもあるため、休職開始時に連絡方法や頻度を決め、本人が安心できる形で会社とのつながりを維持することが望まれます。
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焦りから無理をしてしまう
体調が少し改善すると、「早く元の自分に戻らなければ」と考え、急に運動を始めたり、資格の勉強を長時間行ったりする人もいます。しかし、回復初期は活動量を急に増やすことで疲労が蓄積し、その後数日間動けなくなることがあります。調子のよい日があっても無理をせず、少しずつ活動量を増やしていくことが回復への近道になります。
「自分だけ取り残されている」と感じる

SNSや同僚からの話を通じて、職場が通常どおり動いていることを知ると、「自分だけ社会から取り残されている」と感じることがあります。また、同期や後輩が昇進した話などを聞き、自己評価が低下することもあります。このような心理は珍しいものではなく、休職中には多くの社員が経験します。企業側も不用意に仕事の状況や人事情報を伝えすぎない配慮が必要です。
回復しても復職が怖いことがある
体調が改善しても、「また同じ環境で悪くなるのではないか」「職場でどう思われるだろう」といった不安から復職をためらう人もいます。特に休職の原因が長時間労働や人間関係であった場合には、その問題が解決されていない限り、不安は残りやすくなります。復職前には本人だけで抱え込ませず、必要な就業上の配慮や相談体制について企業と共有しておくことが重要です。
家族への申し訳なさを感じることもある

休職中は家族の支えが回復につながる一方で、「収入が減って迷惑をかけている」「家族に心配ばかりかけている」と感じる社員もいます。その結果、家族にも本当の体調を話せず、一人で抱え込んでしまうことがあります。家族から復職を急かされることで焦りが強くなる場合もあり、必要に応じて主治医や産業医へ相談することが望まれます。
会社が理解しておきたいこと

お休職中の社員は、見た目では元気そうに見えても、心の中では不安や焦りを抱えていることがあります。そのため、「元気そうだから大丈夫」「旅行へ行けるなら働ける」と判断することは適切ではありません。会社は本人の気持ちを決めつけず、必要な連絡を行いながら、療養に集中できる環境を整えることが重要です。復職可否については主治医や産業医の意見も踏まえ、客観的に判断する必要があります。
これまでの産業医経験を踏まえて

これまで産業医として多くの休職者と面談していると、本人が最も強く話す内容は病気そのものではなく、「職場へ迷惑をかけている」「早く戻らないと居場所がなくなる」「周囲にどう思われているか分からない」といった心理面であることが少なくありません。一方で、会社側が休職制度や今後の流れを丁寧に説明し、次回の連絡時期を明確にしていたケースでは、本人の焦りが軽減し、治療へ集中しやすくなっていました。企業が社員心理を理解し、必要以上に復職を急がせず、安心して療養できる環境を整えることは、結果として安定した復職にもつながると感じています。
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まとめ

休職中の社員は、安心感だけでなく、罪悪感、焦り、孤立感、将来への不安など、さまざまな心理を抱えながら療養しています。企業はその気持ちを理解し、復職を急かすのではなく、必要な手続きや情報を分かりやすく伝えながら、安心して治療へ専念できる環境を整えることが重要です。対応に迷う場合には、人事担当者や上司だけで判断せず、産業医や主治医と連携しながら、本人の回復段階に応じた支援を進めることが望まれます。
この記事の執筆者
Dr.Y(精神科医・産業医)
国立大学医学部を卒業後、都内の基幹病院で初期研修を修了。
その後、首都圏の急性期精神科病院に勤務し、
統合失調症、双極性障害、うつ病、依存症、認知症など
幅広い精神疾患の診療に従事。
現在は複数企業の選任産業医として、
復職支援、メンタルヘルス不調者対応、労務トラブル予防、
組織改善支援を行っている。
※本記事は精神科医・産業医としての専門的知見に基づき執筆しています。 個人が特定されないよう配慮し、プライバシー保護を最優先としています。
企業のメンタルヘルス対応で、判断に迷ったら
本記事は一般的な考え方をまとめたものです。 休職・復職対応、産業医面談、職場配慮の判断は、 企業の状況や従業員の状態によって異なります。
社内だけで判断が難しい場合は、 精神科専門の産業医に相談することで、 リスクを抑えた対応が可能になるケースもあります。
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