休職中のSNS投稿は問題になる?

メンタルヘルス不調などで休職している社員のSNS投稿を見て、「旅行へ行っている」「外食をしている」「楽しそうに見える」と感じ、不適切ではないかと相談を受けることがあります。しかし、SNSへ投稿があることだけで休職が不正であるとは判断できません。休職中は治療と休養が目的であり、その過程で外出や趣味、家族との時間を過ごすことが回復につながる場合もあります。一方で、会社への虚偽説明や就業規則違反が疑われるケースでは、事実関係を慎重に確認する必要があります。企業はSNSだけで結論を出さず、医学的な視点と労務管理の視点を分けて考えることが重要です。
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SNS投稿だけで復職可能とは判断できない

「旅行へ行けるなら仕事もできるはず」「食事へ行けるなら出勤できるのではないか」と考えられることがあります。しかし、自分の体調に合わせて休憩できる旅行や外出と、毎日決まった時間に通勤し、責任を伴う業務を継続することは異なります。メンタルヘルス不調では、短時間の外出や趣味が回復過程の一部となることもあります。そのため、SNSの写真だけで就業能力を判断することは適切ではありません。
外出や旅行が直ちに問題になるわけではない
主治医の治療方針として散歩や外出を勧められることは珍しくありません。また、家族旅行や趣味の活動によって気分転換を図ることが回復につながるケースもあります。休職中に外出していることだけを理由に、「休職制度を悪用している」と決めつけるべきではありません。重要なのは、その行動が療養に反するものかどうかではなく、休職理由や現在の病状との整合性を総合的に確認することです。
会社がSNSを監視し続けることは望ましくない

本人のSNSを日常的に確認し、投稿内容を細かく記録するような対応は、本人との信頼関係を損なう可能性があります。また、断片的な投稿だけでは、撮影時期や実際の体調、投稿の背景までは分かりません。企業としては、SNSを積極的に監視するのではなく、就業上問題となる具体的な情報がある場合に限り、事実確認を慎重に進めることが望まれます。
SNSの情報だけで処分を判断しない
SNSへ投稿された写真や動画だけでは、撮影日時や本人の実際の状況を正確に把握できません。過去に撮影した写真を後日投稿していることもあります。そのため、「旅行の写真が投稿されていた」という理由だけで懲戒処分や復職判断を行うことは適切ではありません。会社として対応が必要と考える場合には、まず本人へ事実確認を行い、必要に応じて産業医や主治医の意見も踏まえながら判断することが重要です。
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問題となる可能性があるケース

一方で、休職理由と著しく矛盾する行動が継続している場合や、休職中でありながら他社で就労していることが判明した場合などは、労務管理上の問題となる可能性があります。また、会社へ「外出もできない」と説明している一方で、頻繁に仕事に近い活動を行っていることが明らかになった場合には、事実関係を整理する必要があります。ただし、このようなケースでもSNSだけで判断せず、本人への確認を優先します。
本人へ確認するときの注意点

SNS投稿について確認する場合には、「SNSを見た」「旅行していましたよね」と問い詰めるような聞き方ではなく、「現在の生活状況について教えてください」と事実を確認することが望まれます。本人にも説明の機会を設け、一方的な決めつけを避けることが重要です。また、健康情報や私生活に必要以上に踏み込まないよう配慮し、確認内容は就業上必要な範囲に限定します。
復職判断とは分けて考える
SNSで元気そうに見えたとしても、それだけで復職可能とは判断できません。復職には、勤務時間に合わせた生活リズム、通勤可能性、集中力、疲労の程度、業務継続能力などを総合的に確認する必要があります。主治医の診断書や産業医面談を踏まえて判断することが重要であり、SNS投稿はあくまでも参考情報の一つにすぎません。
会社も不用意な発言を避ける
「SNSを見る限り元気そうですね」「旅行へ行けるなら働けますよね」といった発言は、本人との信頼関係を損ねるだけでなく、必要な療養まで否定されたと受け取られる可能性があります。会社は投稿内容を評価する立場ではなく、就業上必要な情報を確認する立場であることを意識し、冷静な対応を心掛けることが大切です。
SNSを投稿する本人にも注意点がある

本人にとっては何気ない投稿でも、会社や同僚が目にすることで誤解を招く場合があります。療養中の外出や趣味が治療の一環であっても、投稿の内容や表現によっては「元気そうだから働ける」と受け止められる可能性があります。SNSを完全に控える必要はありませんが、公開範囲や投稿内容には一定の配慮を持つことが望まれます。
これまでの産業医経験を踏まえて

これまで産業医として相談を受けた中でも、「旅行の写真がSNSに投稿されていたので復職できるのではないか」という相談は少なくありませんでした。しかし、実際に本人へ面談すると、旅行中も十分な休憩を取りながら過ごしており、勤務時間中の集中力や通勤にはまだ大きな課題が残っていたケースもありました。一方で、SNSの情報だけを根拠に会社が本人を疑うような対応を行ったことで、信頼関係が悪化したケースもあります。SNSはあくまで一部の情報であり、企業としては事実確認を丁寧に行い、医学的評価と労務管理を分けて判断することが重要だと感じています。
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まとめ

休職中のSNS投稿だけで、復職可能かどうかや休職の適否を判断することはできません。外出や旅行が療養の一環となることもあり、SNSには実際の生活の一部しか映っていないことが多いためです。企業はSNSを日常的に監視するのではなく、必要な場合のみ事実確認を行い、本人の説明や主治医・産業医の意見も踏まえながら対応することが重要です。感情的に判断するのではなく、客観的な事実に基づいて冷静に対応することが、本人との信頼関係や適切な復職支援につながります。
この記事の執筆者
Dr.Y(精神科医・産業医)
国立大学医学部を卒業後、都内の基幹病院で初期研修を修了。
その後、首都圏の急性期精神科病院に勤務し、
統合失調症、双極性障害、うつ病、依存症、認知症など
幅広い精神疾患の診療に従事。
現在は複数企業の選任産業医として、
復職支援、メンタルヘルス不調者対応、労務トラブル予防、
組織改善支援を行っている。
※本記事は精神科医・産業医としての専門的知見に基づき執筆しています。 個人が特定されないよう配慮し、プライバシー保護を最優先としています。
企業のメンタルヘルス対応で、判断に迷ったら
本記事は一般的な考え方をまとめたものです。 休職・復職対応、産業医面談、職場配慮の判断は、 企業の状況や従業員の状態によって異なります。
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