メンタル不調と離職|退職につながる前に企業が確認したいポイント

社員の離職には、待遇、仕事内容、キャリア、人間関係などさまざまな理由がありますが、メンタル不調が関係しているケースもあります。特に注意したいのは、本人が不調を抱えたまま勤務を続け、会社へ十分に相談できない状態で退職を選択する場合です。一方で、離職のすべてをメンタルヘルスの問題として捉えることも適切ではありません。本記事では、メンタル不調と離職の関係について、企業が確認しておきたいポイントを産業保健の実務を踏まえて解説します。
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メンタル不調が離職につながることがある

仕事による負担が続き、睡眠や気分、集中力などに変化が出ていても、本人が会社へ相談しないことがあります。そのまま勤務を続けた結果、「もう会社を辞めるしかない」と考えるケースもあります。
退職の申し出が最初の不調のサインになることもあるため、それ以前に相談できる仕組みを整えることが重要です。
突然の退職に見えても以前から変化している場合がある

会社側からすると突然の退職に見えても、振り返ると遅刻や欠勤が増えていた、仕事の能率が低下していた、周囲との会話が減っていたということがあります。
一つの変化だけでメンタル不調とは判断できませんが、普段との違いが続いている場合には早めに状況を確認する意味があります。
「辞めたい」という言葉の背景を確認する
社員から退職について相談された場合、会社が無理に引き止めることは適切ではありません。一方で、強い不調の中で判断している可能性がある場合には、現在の健康状態を確認することも重要です。
必要に応じて産業医面談や医療機関への受診につなぎ、体調と退職の問題を整理して考えることがあります。
相談できない職場では離職まで問題が表面化しにくい

「忙しいと言うと評価が下がる」「体調不良を伝えると周囲に迷惑をかける」と社員が感じている職場では、状態が悪化しても相談につながりにくくなります。
相談窓口を設置するだけではなく、上司、人事、産業医など複数の相談先を利用できることを日頃から周知しておくことが重要です。
離職の背景に業務量がないか確認する
メンタル不調者や退職者が続いている部署では、個人への対応だけでなく業務量にも目を向けます。慢性的な残業、人員不足、退職者の仕事を残った社員が引き継ぐ状態などが続いていないかを確認します。
一人が退職したことで周囲の負担が増え、さらに別の社員が不調になるという連鎖にも注意が必要です。
人間関係だけを原因と決めつけない

退職理由として「上司との関係」が挙げられることがありますが、実際には業務量や評価、異動、家庭の事情など複数の要因が重なっている場合があります。
本人の話を尊重しつつも、原因を一つに決めつけず、会社として調整できる要因があるかを整理することが実務的です。
休職という選択肢がある場合もある
健康状態が大きく悪化している社員では、すぐに退職するのではなく、治療や休養のために休職するという選択肢が考えられる場合もあります。
もちろん、退職するかどうかは本人の意思も重要です。会社側は利用できる制度を説明し、健康状態については主治医や産業医の意見も踏まえながら整理します。
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復職後の離職にも注意する

休職から復職できても、復職直後から休職前と同じ仕事量を求められたり、職場で居場所がないと感じたりすると、結果として退職につながることがあります。
復職後は業務量を段階的に戻し、一定期間は上司、人事、産業医などが勤務状況を確認することが重要です。
退職者が多い部署は部署単位で確認する

会社全体の離職率だけでは、特定部署の問題が見えないことがあります。同じ部署で短期間に退職者や休職者が続いている場合には、残業時間、人員配置、管理職の負担などを確認する意味があります。
個人の事情として処理するだけでなく、部署に共通する要因がないかを見ることが重要です。
離職防止だけを目的にしない
企業にとって人材の離職は大きな問題ですが、「辞めさせないこと」だけを目標にすると、本人に無理な勤務継続を求めることになりかねません。
重要なのは、健康上の問題を早めに把握し、勤務継続が可能であれば必要な調整を行うことです。そのうえで本人が退職を選択する場合には、その意思も尊重して対応する必要があります。
離職者の傾向を職場改善に生かす

個人が特定されない形で退職理由や部署ごとの傾向を整理すると、職場改善の手掛かりになることがあります。離職者が多い部署で長時間労働も続いているのであれば、人員配置や業務分担を見直す必要があるかもしれません。
離職という結果だけを見るのではなく、その前にどのような職場上の変化があったのかを振り返ることが重要です。
産業医を早期相談の窓口として活用する
産業医面談は、休職が決まった社員だけが利用するものではありません。「最近仕事がつらい」「このまま勤務を続けられるか不安」といった段階でも相談できます。
状態が大きく悪化する前に面談につながれば、受診勧奨や一時的な業務調整などを検討できる場合があります。
これまでの産業医経験を踏まえて

これまで産業医として面談していると、退職を考えるほど追い込まれてから初めて相談につながる社員もいます。詳しく話を聞くと、その数か月前から睡眠が悪化し、残業が増え、休日も十分に回復できていなかったということがあります。一方、早い段階で面談につながったケースでは、業務量や残業を一時的に調整することで勤務を継続できる場合もあります。すべての離職を防ぐことが企業の役割ではありませんが、体調悪化によって本人が「退職しか選択肢がない」と感じる前に、相談や就業調整ができる仕組みを整えておくことは重要だと考えています。
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まとめ

メンタル不調と離職を考える際には、退職という結果だけでなく、その前に睡眠、勤怠、業務量などに変化がなかったかを確認することが重要です。特に同じ部署で休職者や退職者が続く場合には、個人の問題だけでなく職場環境も振り返る必要があります。社員が早い段階で上司、人事、産業医などへ相談でき、必要に応じて業務調整や休職を検討できる体制を整えることが、結果として安定した就業にもつながります。
この記事の執筆者
Dr.Y(精神科医・産業医)
国立大学医学部を卒業後、都内の基幹病院で初期研修を修了。
その後、首都圏の急性期精神科病院に勤務し、
統合失調症、双極性障害、うつ病、依存症、認知症など
幅広い精神疾患の診療に従事。
現在は複数企業の選任産業医として、
復職支援、メンタルヘルス不調者対応、労務トラブル予防、
組織改善支援を行っている。
※本記事は精神科医・産業医としての専門的知見に基づき執筆しています。 個人が特定されないよう配慮し、プライバシー保護を最優先としています。
企業のメンタルヘルス対応で、判断に迷ったら
本記事は一般的な考え方をまとめたものです。 休職・復職対応、産業医面談、職場配慮の判断は、 企業の状況や従業員の状態によって異なります。
社内だけで判断が難しい場合は、 精神科専門の産業医に相談することで、 リスクを抑えた対応が可能になるケースもあります。
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