なぜ「元の部署に戻す」は失敗するのか

休職後の復職支援において、「とりあえず元の部署に戻す」という判断が取られることは少なくありません。 しかし実際の現場では、この対応が再休職や症状悪化につながるケースが非常に多く見られます。 本記事では、なぜ「元の部署に戻す」という判断が失敗しやすいのかを、産業医・人事の視点から整理します。
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① 原因となった環境が何も変わっていない

メンタル不調の多くは、個人の脆弱性だけでなく、業務内容・人間関係・評価制度・業務量などの 「職場環境要因」が複合的に関与しています。
元の部署に戻すという判断は、不調の原因となった環境に再び本人を戻すことを意味します。 本人の症状が一時的に改善していても、環境が同じであれば再燃するのは自然な流れです。
② 本人の「大丈夫です」は過信できない
復職面談でよく聞かれるのが「元の部署で大丈夫です」「迷惑をかけたくない」という発言です。 しかし、これは回復の証拠ではなく、罪悪感や不安から来る防衛的発言であることが少なくありません。
特に、真面目で責任感が強い社員ほど、自身の限界を正確に評価できず、 結果として無理な復職配置を受け入れてしまいます。
③ 周囲の目が強いストレスになる
元の部署には、休職前の評価・トラブル・噂といった「記憶」が残っています。
- 「また休むのではないか」という無言の視線
- 腫れ物に触るような不自然な配慮
- 以前と同じ役割を期待される空気
これらはすべて、復職者にとって強い心理的負荷となり、症状再燃の引き金になります。
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④ 業務負荷は徐々に戻る前提が崩れやすい

復職当初は配慮されていても、数週間〜数か月で業務量が元に戻るケースは珍しくありません。
特に人手不足の部署では、 「もう慣れたでしょ」「前はできていたよね」という期待が自然に強まります。 結果として、本人が断れずに抱え込み、再び限界を超えてしまいます。
⑤ 「元に戻す」こと自体がゴールになっている

本来のゴールは「安定して働き続けられること」です。 しかし現場では、
- 元の部署に戻せた=復職成功
- 配置転換は本人に失礼
- 前例がないから難しい
といった理由で、手段が目的化してしまうことがあります。
産業医・人事が考えるべき視点

「元の部署に戻すかどうか」は、善意や公平性の問題ではありません。 以下の視点が重要です。
- 不調の要因は業務・人間関係・評価構造のどこにあったのか
- その要因は現在、どの程度調整されているか
- 本人が無理をしていないかを継続的に確認できる体制があるか
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まとめ

「元の部署に戻す」という判断は、一見合理的で公平に見えます。 しかし、職場環境・本人の心理・周囲の反応を十分に考慮しなければ、 再休職という最も避けたい結果を招きやすい選択です。
復職支援において重要なのは、 元に戻すことではなく、続けられる形を作ることです。 産業医や人事がその視点を共有できるかどうかが、復職の成否を分けます。
この記事の執筆者
Dr.Y(精神科医・産業医)
国立大学医学部を卒業後、都内の基幹病院で初期研修を修了。
その後、首都圏の急性期精神科病院に勤務し、
統合失調症、双極性障害、うつ病、依存症、認知症など
幅広い精神疾患の診療に従事。
現在は複数企業の選任産業医として、
復職支援、メンタルヘルス不調者対応、労務トラブル予防、
組織改善支援を行っている。
※本記事は精神科医・産業医としての専門的知見に基づき執筆しています。 個人が特定されないよう配慮し、プライバシー保護を最優先としています。
企業のメンタルヘルス対応で、判断に迷ったら
本記事は一般的な考え方をまとめたものです。 休職・復職対応、産業医面談、職場配慮の判断は、 企業の状況や従業員の状態によって異なります。
社内だけで判断が難しい場合は、 精神科専門の産業医に相談することで、 リスクを抑えた対応が可能になるケースもあります。
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