人事だけが知っているメンタル不調社員の現実

人事担当者が直面するメンタル不調社員対応の現実を表現したシンプルな職場イメージ
表に出にくいメンタル不調社員の実情は、まず人事部が最初に把握している

メンタル不調の相談は、本人・上司・同僚ではなく、最終的に人事へ集中します。 しかし実際の現場では「正解がない」「全員が納得しない」「情報が足りない」状態のまま、 人事が火消し役になり続けるケースが少なくありません。

本記事では、人事が日々直面している“表に出にくい現実”を整理し、 会社としてのリスクを最小化しつつ、社員を適切に守るための考え方と手順を解説します。

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結論:人事の仕事は「善悪」ではなく「手順と証拠」で決まる

仕事や職場対応について考え悩むビジネスパーソンのイメージ画像
判断に迷う場面こそ、冷静な視点と専門的な助言が求められます

メンタル不調対応で揉める原因は、本人の性格や上司の資質よりも、 会社の手順が曖昧で、記録と判断基準が不足していることが多いです。

  • 何を根拠に「配慮できる/できない」を判断したのか
  • 就業上の措置(配置転換・業務軽減・休職など)を検討した過程
  • 本人の同意や、主治医意見書の位置づけ
  • 会社としての安全配慮と業務遂行性のバランス

これらを「感情」ではなく「ルール」で扱える組織ほど、長期的に揉めにくくなります。

準主幹記事(あわせて読みたい)
メンタル不調を理由とした休職・復職・就業可否の判断について、 企業が迷いやすいポイントを産業医の実務視点で整理した準主幹記事です。 主治医意見書の読み方や再発防止の考え方も解説しています。

人事だけが知っている“現実” 7つ

職場の課題やメンタルヘルスの気づきを象徴する電球のイメージ画像
職場での「気づき」や判断の重要性を象徴するイメージ

1. 本人の訴えは“日によって”変わる

本人の状態は波があり、昨日できたことが今日はできないことがあります。 その結果、本人の説明が矛盾して見えることもありますが、嘘というより症状の影響である場合があります。

2. 上司の対応が原因かどうかは、すぐには断定できない

「パワハラが原因」と主張されても、実際は業務量・評価・異動・家庭要因など複合要因が絡みます。 人事は事実確認再発予防の両方を同時に求められます。

3. “配慮”は無限にできない

配慮は必要ですが、業務の再配分には限界があります。 配慮が「他の社員の過重負担」につながると、二次的なメンタル不調を生むこともあります。

4. 「主治医の意見書=就業可否の最終結論」ではない

主治医意見書は重要ですが、職場の業務実態や安全配慮の判断は会社側にも責任があります。 必要に応じて産業医面談情報提供書(会社→主治医)で補完します。

5. 本人が“休みたい”のか、“働きたい”のかが揺れる

本人は生活不安・評価不安・罪悪感を抱え、「休職したい」と「復帰したい」を行き来することがあります。 人事は意思の確認段階的な制度運用が必要になります。

6. 情報が少ないほど「炎上」する

記録がない、面談メモがない、説明の履歴がない。 こうした状態だと、後から「言った/言わない」になりやすく、紛争リスクが上がります。

7. 人事は“悪者役”になりやすい

本人からは「会社の代理人」、現場からは「現実を分かっていない」と見られやすい立場です。 だからこそ、人事はルール化外部の専門家を味方につけることが重要です。

主幹記事(あわせて読みたい)
休職者対応だけでなく、未然防止や再発予防、職場環境の調整まで含めた企業のメンタルヘルス対策について、 産業医の実務視点からわかりやすく解説しています。

揉めない会社がやっている基本フロー

産業医や人事担当者が就業判断のために書類を確認・記入している様子
就業判断や配置転換では、記録と手順の整理が重要です。
  1. 初動:本人の訴え整理(症状/困りごと/就業上の支障)
  2. 安全配慮:自傷他害・希死念慮・重大ミスリスクの確認
  3. 業務実態:職務内容・残業・評価・配置・人間関係の事実確認
  4. 医療情報:意見書取得、必要なら会社→主治医へ情報提供
  5. 産業医判断:就業区分(通常/就業制限/休業)と配慮内容の整理
  6. 制度運用:休職・復職・復職判定・リワーク等を段階運用
  7. 記録:面談メモ、説明内容、本人同意、決定理由の保存

「人事だけで抱え込む」ほど事故が起きます。 会社としての判断を、産業医・社労士・弁護士などと役割分担できる体制が安全です。

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よくあるNG対応

  • 本人の訴えを鵜呑みにして、事実確認を省略する
  • 上司だけに対応を任せ、人事は後追いになる
  • 「様子見」を続けて、判断の先送りが常態化する
  • 面談記録や説明履歴を残さない
  • 主治医意見書だけで就業可否を決めてしまう

産業医が入ると何が変わるか

産業医が社員の話を丁寧に聞き、面談を行っている様子
早めに相談することで、問題は大きくなりません。

産業医が関与すると、対応が「気合」から「判断基準」に変わります。 特にメンタル不調では、就業可否・配慮内容・休職の必要性を医学的に整理できる点が大きいです。

  • 就業上のリスク(事故・重大ミス・再発)を医学的に整理
  • 会社→主治医への情報提供の作成支援
  • 復職可否の判断プロセスの明確化
  • 現場と人事の板挟みを減らす「第三者の言語化」
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まとめ:人事を守ることが、社員を守ることになる

職場における思いやりや配慮、メンタルヘルス支援を象徴するハートのイメージ画像
従業員への配慮や支援の姿勢が、職場の安心感につながります

メンタル不調対応は、社員を守るためのものですが、 同時に「人事が燃え尽きない仕組み」を作らないと継続できません。

ルール化・記録・専門家連携を整えることで、 会社も社員も守れる対応に変わっていきます。


人事のメンタル不調対応でお困りなら(相談導線)

もし「このケース、会社としてどう動くのが安全か」「主治医への情報提供をどう書くか」など、 実務面で詰まっている場合は、産業医として状況整理から支援できます。

  • 産業医面談(就業区分・配慮案の整理)
  • 主治医への情報提供書の作成支援
  • 復職判定フローの整備
  • 再発予防の職場調整(上司・人事向け助言)

※ 会社の状況に合わせて「揉めない運用」に落とし込むことを重視します。

この記事の執筆者

Dr.Y(精神科医・産業医)

国立大学医学部を卒業後、都内の基幹病院で初期研修を修了。 その後、首都圏の急性期精神科病院に勤務し、 統合失調症、双極性障害、うつ病、依存症、認知症など 幅広い精神疾患の診療に従事。
現在は複数企業の選任産業医として、 復職支援、メンタルヘルス不調者対応、労務トラブル予防、 組織改善支援を行っている。

※本記事は精神科医・産業医としての専門的知見に基づき執筆しています。 個人が特定されないよう配慮し、プライバシー保護を最優先としています。

企業のメンタルヘルス対応で、判断に迷ったら

本記事は一般的な考え方をまとめたものです。 休職・復職対応、産業医面談、職場配慮の判断は、 企業の状況や従業員の状態によって異なります。

社内だけで判断が難しい場合は、 精神科専門の産業医に相談することで、 リスクを抑えた対応が可能になるケースもあります。

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